床と天井がブチ抜かれることによって白蓮と永琳は月明かりに晒されることとなった。
不自然に暗黒空間にされていた場所はバニシングコアのスポットライトを失い、そして天を覆うものを失ったことで適度な薄暗さに戻ったのだ。
眼下に広がるのは膝をついて屈してしまった白蓮と彼女に最後の一撃を放とうとする永琳。
バニシングコアの残骸は頭上からの瓦礫から俺と輝夜達を庇い、白蓮と永琳を阻むように落下した。ズシンという重苦しい地響きと振動。無事に落下できた以上、このバクテリアン軍の残骸にはもはや用はない。目の前の邪魔なスクラップをツインレーザーで吹き飛ばすとかつて暗黒に覆われていた永遠亭最深部へ躍り出た。遅れて地上のイナバと姫様も。
まず喉を突いて出たのは長い間別行動をしていてその安否が心配だった我らが住職サマの名前であった。
貴方「白蓮っ! 大丈夫かっ!?」
白蓮「○○さんっ! 来てくれると信じていましたよ」
貴方「当たり前だ! 人々が希望を持ち続ける限り、銀翼は危機を救うべく、時を超えて馳せ参ずる!!」
「希望の銀翼」、「最後の希望」。ともに銀翼の超時空戦闘機を比喩した言葉。アールバイパーはそんな伝説や神話を残してきた銀翼たちの末裔。ここぞとばかりにキメる。最愛の仲間の無事を確認すると、俺は踵を返し今回の異変の犯人をギンと睨み付けた。
最奥で威風堂々と佇むは永遠亭の月の頭脳、そして幻想郷にバクテリアンを呼び寄せた張本人。先程のバニシングコアとの戦闘でブチ抜かれた天井からは星空が、そして忌々しい緑色の円盤「ゼロス要塞」がのぞいていた。
永琳「来たわね、超時空戦闘機『アールバイパー』。そして銀翼の駆り手○○! 彼らバクテリアンは私たちの存続にかかわる存在。この異変の、私の生きるという意思を邪魔するというなら全力で抵抗するわよ……」
いまだ弓にエネルギー弾を番え威嚇する永琳。生きるための戦い。確かにそう言っていた。でも蓬莱人は決して死ぬ事はない筈……? いぶかしむ俺に白蓮が事情を説明した。
白蓮「それは……」
彼女から事情を聴き、合点がいった。存在を否定される、忘れられると妖怪は消滅してしまうようだが(命蓮寺の響子もあと少しで消えてしまうところだったらしい)、さしもの蓬莱人もこの消滅までは対処できないのだという。
なるほど、確かに生きる為の戦いだ。そういえばかつての俺も生きる為の戦いを繰り広げてきた。訳も分からぬうちにアールバイパーが具現化し、訳も分からぬうちに幻想入り。理不尽な理由で強大な妖怪「八雲紫」に命を狙われ、そして気がつくと白蓮に庇われ、命蓮寺の一因になっていた。そこから始まる八雲紫に弾幕で勝利するための戦い。あれはまさしく幻想郷で生き続ける為の戦いであった。
俺のしてきた事は正しかったのだろうか? 俺が幻想入りした事で幻想郷のどこかで歪が生じていないか、誰かが踏みにじられていないか……。思わず操縦桿を握る腕の力が抜ける。
いいや、今は悩んでいる場合ではない! 永琳の異変を完遂させてしまえば幻想郷はバクテリアンの支配する世界になってしまう。それは何としても阻止しなくてはならない! 抜けかけた力を、戦意を呼び覚まし、雄たけびを上げつつ高らかに宣言した。
貴方「ならば幾度となく繰り返された伝説や神話のように、この銀色の翼『アールバイパー』でバクテリアンごとお前の野望を打ち砕く!」
今度は大丈夫だ。ロックオンサイトに永琳を捉え、臨戦態勢を取る。
永琳「伝説ぅ? アッハハハハ……! 随分とロマンチックな事を言い出すのね。この無数に現れるバクテリアン達をたった数人でどう料理するのかしら? そんな古臭い伝説など打ち砕いて誰が新たなる幻想郷の支配者に相応しいか、思い知らせてあげるわ!」
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名前:聖白蓮
身体強化率326%
お姉ちゃん!
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