信じられない光景が広がっていた。黄昏時の薄暗い闇の中で息を切らして倒れ込んでいるのは自警団の皆さん。無数の体の上にただ一人立ち尽くすのは両腕を炎で纏った妹紅と辻斬り……。
慧音「そんな……!」
幸いなことに致命傷を負っている者はいないようである。辻斬りが手負いの自警団に手をかけようとすると妹紅が必死に止めに入るからだ。だが、その妹紅もかなり押されているようである。肩を押さえながら息を弾ませてそれでも眼光を絶やさずに敵を睨み付けていた。
考えてみれば当然だ、相手は武器を手にしている。あんなものを振り回されては素手の妹紅では分が悪いというのは火を見るよりも明らかなのであるから。
貴方「アレが……『魂魄妖夢』……!?」
確かに星が言っていたようにおかっぱ頭の背の低い少女ではある。だが、むき出しの2本の刀は血で染まっており、彼女は常に薄ら笑いを浮かべている。明らかに正常な状態とは言えない。
何よりも特徴的であったのはその紅蓮色の瞳。まるで虚空を見ているように焦点が定まっているようには見えない。だが、殺意に満ちた光を常に放っており、非常に危険な状態であることはここに転がっている自警団の皆さんを見れば容易にわかる。
そしてその息使いひとつが命取りとなった。息を吐く際の一瞬の心の緩み、その瞬間を妖夢は見逃しはしなかった。一気に地面をけると一閃、妹紅の胴体に斬りつけた。それこそ誰も反応が出来ないほどの速さで。
一瞬胴体が真っ二つになる様が見えた気がした。慧音の息を飲む音、虫の息の自警団の驚きの表情。
慧音「妹紅っ!!」
飛び散る鮮血は赤黒色。その赤黒色はいつしか炎となり、そしてその動態もろとも爆散した。う、嘘だ……。人を殺した……!
小さく燃える炎は亡骸を灰に帰す。なんということだ、遂に犠牲者が出てしまった。……と思った矢先、弔いの炎が突然激しさを増す。しばらく激しくメラメラと燃えあがると炎は拡散し、そして消えた。その中心にいたのは無残にも胴体を真っ二つに斬られた筈の妹紅が何食わぬ顔して現れたのだ。
妹紅「甘いな、蓬莱人は殺せない。不死鳥のごとく何度でも蘇る。さあ、もう一度始め……」
しかし台詞を全て言い切る前に、妹紅は地面に血反吐を吐き、ガクリと膝をついた。ゼエゼエと肩を上下させている。連戦のダメージは残っているのだろう。素人目に見てもそれは十分過ぎるほど分かる。
慧音「妹紅、ボロボロじゃないか! いくら不死身だからって無茶し過ぎだ! もういい、よくやったよ。後は私達に任せるんだ」
それでも戦地に赴こうとする友人を必死になって止めるのは先生であった。ってか「殺せない」って比喩でも何でもなく本当だったのかよ……。とにかくあれ以上無茶させるわけにはいかない。慧音は妹紅の介抱で手が離せないようだし、ここは俺がやるしかない……!
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名前:聖白蓮
身体強化率326%
お姉ちゃん!
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