命蓮寺の一室に妖夢を運び込んで数日が過ぎた。

彼女は今もスウスウと寝息を立てて眠りについている。もっとも寝息も顔に近づいてやっとわずかに聞こえる程度なのだが。そして彼女に何をしても目を覚ますようなそぶりは見せない。大きい音を立てても揺すってもまるで反応がないのだ。目を覚ましてから事情を聴こうとしたのだが、本人があんな状態では聞くに聞けない。

起こそうと躍起になっていたら「怪我人を無理に起こすんじゃありません!」と白蓮に叱られ部屋から追い出されてしまった。体を拭いてあげたり白蓮なりの彼女の体調を探ろうとしているのだろう。それならば俺は出て行ったほうがいいだろう。少々さみしい気もするが俺は部屋を後にする。

そういえばこの後薪割りを頼まれているのであった。外の世界では斧を振るうことなどなかったのでまるで扱えなかったが、ここに来てからはそれなりに機会もあるのである程度は慣れたつもり……。

貴方「くっ……」

とはいえまだまだ慣れないもので、傍から見たら危なっかしいことこの上ないだろう。いくつか叩き割って汗も噴き出たので休憩していると、今ではすっかりこの場に馴染んでいる半霊がふよふよと寄ってきた。手を差し伸べるとスリスリと頬ずりしてくる。火照った体にひんやり気持ちがいい。

と、薪割りの途中であることに気が付いたのか、斧の前で漂い始める。

貴方「何だ、お前も薪割りやるのか?」

答える声はないが、霊魂のような姿がみるみる姿を変え、妖夢と同じ姿になった。そういえばそんな事も出来たなコイツ。でも相変わらずちょっと白っぽい。

半霊「……(フンスッ!)」

見るからにやる気満々だ。だが、まるで刀を扱うように斧を構える。うーん、ちょっと不安になってきたぞ。そのまま薪を一つ手に取ると何を思ったのかポーンと放り投げ始めた。おまっ、まさか……

そのまさかであった。妖夢の姿をした半霊はすぐに高く飛翔、斧を振り回し始めた。すぐさま着地する半霊、遅れてバラバラと落ちてくる薪。半霊はなおもフンと鼻を鳴らして自慢げな顔をしている。と同時にクイックィッと指を動かし催促してきた。なるほど、もっと投げろってことだな。

面白いのでガンガン投げ込む。それをまるで刀を扱うようにスパスパと真っ二つに叩き割っていくのだ。しかし少し透き通っている半霊を認識するのは難しく、遠目に見ると斧がひとりでに振り回されているようにも見えなくもない。軽くホラーである。

小傘「ひぇ~、斧がひとりでに飛び回ってる~! 怖いよー!」

視界の端のほうで傘の中に隠れてそそくさと逃げていく小傘の姿が見えた気がした。さて、これが最後の薪だ。いつもよりも高く放り投げる。すかさず追いかける半霊。やたらせわしなく動く刃の軌跡。落ちてきた薪は……何故か妖夢の姿にカットされていた。なんか知らないがスゲェ。

元のお餅のような姿に戻った半霊を抱き寄せる。ありがとうと言いながら。

半霊「……♪」

こんな感じで半霊のいる日常、いつまでもとは言わないがもっと長く続くものだと思っていた。あの時は……




名前:聖白蓮
身体強化率326%

お姉ちゃん!

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