貴方「がはっ……」
何度目の被弾だろうか。この鈴仙の放つ弾は銃弾のような形をしているのだが、これが急に軌道を変えたりするのだ。そんなトリッキーな攻撃に俺が順応出来る筈もなく、何度もその銀翼に弾を受けていた。
鈴仙の赤い瞳が再び光る。まただ。この直接頭の中をこねくり回される感じ。こんなのをずっと受けていたら冗談抜きで発狂しかねない。あの瞳を見ては駄目だ。ではどうやって反撃する? まさか相手を見ないで攻撃だなんてばかげている。
頼みの魔力レーダーもこの周囲が魔力で満ち溢れているからか、まるで機能していない。いや、まだあの手があった! アールバイパーの代わりに攻撃をしてくれる頼もしい味方が!
貴方「操術『サイビット・サイファ』!」
ネメシスとコンパクを呼び出し、鈴仙に向かわせる。が、目標に着弾することなくあらぬ方向へと飛んで行ってしまう。慌てて呼び戻すが制御を失っているらしく、戻ってこない。
鈴仙「無駄よ。その人形と霊魂は方向感覚を狂わせてまともに機能しない」
自らが回収に回っているとその隙にもう一発弾をくらってしまう。アールバイパーからアラート音が鳴り響く。これ以上の戦闘は危険だ。何とか退避したいがこう方向感覚をかき乱されている状態では逃げることもままならない。ここまでか……
鈴仙「弱い、弱すぎるわ。能力使ったとはいえここまでアッサリやられてしまうだなんて。次に考えていることは逃げることでしょう? 私もヤバそうになったらよくやるから分かるわ。追い詰められた者の心理はね」
駄目だ、まるで落ち着かない。平衡感覚の欠如やアールバイパーのダメージから離脱は困難。せめて冷静さを取り戻さなくては。……ならば時間稼ぎだ! 何かしらこの状況を打破する手段がある筈。それを模索するための時間が必要である……。
自殺行為かもしれないが、俺はリデュースを解除し、キャノピーを開いた。突飛な行動に銃口(指なんだけど)をこちらに向けつつ口をぽかんとあけて困惑している鈴仙。
貴方「いやはや、君は強い。今の俺では勝てそうにないよ。それよりもちょっと話でもしようや」
鈴仙「貴方は一体何を……。話すことなんてありませんっ!」
まあ当然の反応。いかんね、隙を見せそうにない。こうなればハッタリをかまそう。俺は懐から宝塔型通信機を取り出し見せつける。
貴方「これを見なっ!」
いつ見ても本物そっくりだ。本物の宝塔の持ち主である星がこちらを間違えて持ち出してしまったこともあるくらいに。
鈴仙「そっ、それは……?」
貴方「通称『レーザー宝塔』。命蓮寺屈指のお宝であり、自在に曲がるレーザーを撃つことも出来る。あまり使いたくなかったがこいつは最後の切り札。さあどうする……? 下手に動くとへにょりレーザー、撃つぞ?」
右手で宝塔のレプリカを掲げつつ凄んでみる。当然このレプリカには本物のようにレーザーを撃つなんて芸当はできない。バレたら終わりだ……
鈴仙「それは毘沙門天の……!? そんな重要なアイテムを貴方ごときが持っているだなんてあり得ないわ。ニセモノでしょう?」
ぐっ……、バレてる! いや、確信は得てない筈。ニセモノだと認めなければいい。震えそうな声を必死に張り上げ虚勢を張り続ける。
貴方「果たしてそうかな? 裏をかいて俺みたいな人間が本物を手にしていることもあるかもしれないぞ? そういえば寅丸星はよくコレをなくしてしまうそうだが、俺が拾ったとかも考えられる。そもそも本物が1つだけとは限らないぜ?」
警戒して宝塔にジリジリと近寄る鈴仙。よし、懐疑心を大きくさせればこちらのもの。
貴方「簡単じゃないの。近くでよく見れば本物かニセモノかわかるでしょうに」
よし、完全に宝塔に注意を逸らすことが出来た。あとは……
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名前:聖白蓮
身体強化率326%
お姉ちゃん!
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