目の前でアンカーの形をしたホログラムが下から少しずつ形成されている。本当に物質転送が始まったようだ。
にとり「いいかい、くれぐれも座標軸をずらさないように!」
貴方「無茶言ってくれるよ。出来るだけ……な」
身をよじり、執拗にこちらを狙い撃つ砲台の攻撃を凌ぐ。サークルコア本体は外殻に沿ってグルグル回っているだけなので体当たりの心配はない。
アンカー型のホログラムが半分ほど表示された。よし、ここから折り返し地点。
不意にサークルコアの動きが止まる。またこの中をバウンドするつもりだろう。ヒヤヒヤしながらその動向に目を見張る俺。何度もアールバイパーをかすめる度に俺の寿命が縮んでいく気がする。
にとり「あと少しだ。もう少しだけ辛抱してくれ!」
だが、悲劇は起きた。唐突に乱反射するサークルコアの本体が一直線にこちらに向かって来たのだ。まずい、あんなの回避できる筈がないぞ!
どうするか……。、逃げるか? しかしそんなことをしては作戦は水の泡となる。さりとてあんな巨体の体当たりを食らったらアールバイパー……というより俺がひとたまりもない。
思索を巡らせ最善の答えを導こうとする……
不意に視界が右に大きくブレた! 脳みそを直に揺るがす強烈な衝撃! 一瞬何が起きたのか分からなかった。グラグラする視界が少しずつ復活する。あろうことかサークルコアの体当たりをもろに受けてしまったようだ!
痛みのあまり悲鳴も上げられない。声が……全然出ない!
ムラサ「○○っ、大丈夫!? ちょっとにとり、○○がっ! ○○がぁっ!!」
にとり「座標軸の深刻なブレ! 粒子化したアンカーが亜空間で引っかかっている。質量の割合は全体の10……20……ちょっ、マシンが引火した!! そんでもって小爆発っ! あああっ、私のウン年分の貯金がぁぁぁ~~」
宝塔型通信機の向こう側でも修羅場になっていたようだ。けたたましく鳴り響くアラームがこちらにまで聞こえる。
ムラサ「あっちでは人の命がかかっているのよ! 今更転送装置なんて……」
にとり「分かっている! でも今の私達では手を差し伸べられないだろう! それよりも目の前の問題を何とかしよう。転送装置が火を吹き始めた。水だ、水をかけるんだ!」
お互いに水にゆかりのある妖怪。鎮火はそこまで苦ではないだろう。コクピットの中から見上げるとホログラム化したアンカーがまるで現世とスキマの狭間で挟まっているかのように中ぶらり状態となっているのが確認できた。
向こうは向こうで必死に抗っているんだ。こうなれば俺だって根性見せてやらないと……。
貴方「爆撃『スプレッドボム』!」
フォースフィールドを纏い、アールバイパーは高く跳躍した。外殻の中狭しと飛び回り周囲を爆撃していく。青白い爆風が周囲の視界を埋め尽くしていった。厄介な砲台もこれで一掃できただろう。そのまま命蓮寺から送られてきたアンカーの傍に向かう。
にとり「よし、転送装置復帰! 再び転送に入るよ」
ホログラム化していたアンカーは銀翼の接近に呼応するかのように実体を得ていく。しかし転送が不完全だったのか、先端部分しか転送されていなかった。根元部分が今まさに少しずつ実体を現そうとしている。
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名前:聖白蓮
身体強化率326%
お姉ちゃん!
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