迂闊だった。俺は「クラブ」のことをすっかり忘れていたのだ。バクテリアンの要塞最深部を防衛する多脚兵器。銀翼の兵装では破壊出来ない強靭なボディでこちらににじり寄って来て踏みつけてくる。

幸い動きはのろいのでもし出てきたらとっとと無視して飛び去ろうと思っていたが、このような閉鎖空間ではそうはいかない。赤紫色のボディをガシャガシャと動かし、こちらに寄って来た。

貴方「追いつめられるぞ。脚をくぐるんだ!」

輝夜にそう指示を出し、俺自身も持ちあがった脚の中に入り込む。股下に潜り込まれたクラブはこちらを踏みつぶそうと脚を動かしてくるが、届かない。ざまぁ見やがれ! その巨体が仇となったな。

輝夜「なんかプルプルしてるけれど……」

上から聞こえる声。気になって見上げてみると、確かにクラブの中心がプルプル震えている。何故かこいつはこうやって腰を振るようなモーションを見せるのだ。何故なのかって? わっかりましぇーん。

……と、ボケかましている余裕はなさそうだ。震えたクラブの腰から数体のダッカーが泡に包まれて出てくるのだ。どういう原理なのか、床に向かって重力が働くものと天井に向かって重力が働くものがいた。

輝夜「ぷぷぷ! 泡吹いてる。本当にカニそのものじゃない」

泡を割って出てきたダッカーどもがクラブに踏まれないようにチョコマカと床や天井を駆け回り、弾を狙い撃ってくる。輝夜、笑っている場合ではないと思うぞ。ひとまず脚の間を再びくぐり、クラブの外側に退避した。

機体をターンさせるとオプションを呼び、ダッカーどもを掃除していく。スペルカードであるオプションシュートやサイビット・サイファを使えば楽ではあるが、長期戦が予想されるので無駄使いは出来ない。フォーメーションオプション、つまり左右に編隊を組み、プチプチと敵機を倒していくのだ。

再びクラブがにじり寄ってくる。今度は下にくぐらずに壁面ギリギリに陣取る。プルプル震える腰。またダッカーを産み落としてくる。その前に俺は腰めがけてツインレーザーとフライングトーピードを撃ちまくる。オプションのフォーメーションもトレースに変えており、一点を集中して放ち続けた。

まずは青い光の針が、遅れて空飛ぶ魚雷がクラブの腰に着弾する。案の定手ごたえがないのだが、吐きだされるダッカーを処理することには成功した。……っ! クラブの脚が降り上げられる。ひざ蹴りを喰らってはひとたまりもないと機体をローリングしつつ平行移動を行う。

輝夜「上からも来ているわ!」

輝夜に注意される矢先、奴は上の脚を振り下ろしてきた。間に合わないっ……!

貴方「操術『オプションシュート』!」




名前:聖白蓮
身体強化率326%

お姉ちゃん!

お気に入り登録登録済み一覧

セーブデータ
新規登録・ログイン・マイページはこちら