出撃を諦めたようである霊夢を神社の外から覗き込みながら、スキマ妖怪はゼロス要塞を仰ぎ見る。

幽々子「紫、霊夢を行かせなくて良かったの? ○○君だけだとちょっと心配よ」

自分が腰かけているスキマとは別の小さなスキマから友人である亡霊少女の声がする。彼女は今大怪我をしているので、紫は幽々子の声だけを博麗神社に移動させている。随分と器用な使い方だ。

紫「大丈夫よ。○○は一人じゃないの。あの蓬莱人の姫もついているから。ほら、永琳が向こうにいるのよ。黙っている筈ないじゃない。それよりも体の調子はどうなの幽々子? 随分と派手にやられたそうじゃないの。よりにもよって可愛い飼い犬に」

僅かに平謝りする妖夢の声が聞こえた気がした。

幽々子「大丈夫よ。ここは永遠亭だもの。月のウサギさんがいい薬を処方してくれたわ。亡霊にもちゃんと効くので助かったわよ。それで話は戻るけれど、どうして霊夢を……」

紫「さっき、霊夢との会話聞いてなかったの?」

幽々子「無茶言わないでよ……」

聞いてる筈がない。霊夢と会話していた時は幽々子と通信などしていないのだから。

紫「外界からやって来た問題事は外界からやって来た銀翼で解決出来ればそれに越した事はないわ。それに……伝説だか神話だかお笑いだかは知らないけれど、あのゼロス要塞が出てくる度に、銀翼があの内部まですっ飛んでアレを破壊するって伝えられているそうよ」

アールバイパーとの決闘の後、紫は外界に赴いて銀翼の事をあれこれ調べていたらしい。今も描かれる銀色の光に目をやりながら紫は続ける。

紫「謎だらけのアールバイパーについて何か解明できるチャンスよ。もちろんアレがしくじったら霊夢を向かわせるつもり。もっともあの男はこの私を決闘で下した程の実力者だし、そう簡単にくたばるとも思えないけれどね」

幽々子「決闘って、あの上海人形の突撃でやられた時? かなり手を抜いていたんでしょう? 紫ったらバレバレだったわよ。でも人間にしては……十分すぎる強さよね」

投げやりに「まあね」と答えると妖怪賢者はゼロス要塞に向かう銀翼に改めて目をやる。そして幽々子にも聞こえないほどの小声でつぶやくのであった。

紫「『人類最後の希望』……か。胡散臭い二つ名だけれど、その希望とやらに賭けてみるのも面白いかもしれないわね……」

あくまで演劇でも見るかのように呑気にスキマに腰かけ、薄ら笑いを浮かべながら円盤の浮かぶ夜空を深呼吸をして仰ぎ見る妖怪賢者なのであった。




名前:聖白蓮
身体強化率326%

お姉ちゃん!

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