(その頃、霧の湖……)
いつもは静寂に包まれる湖であったが今夜に限って言えば相当やかましい。至る所で妖精たちがキイキイと甲高い声を上げて空を指さしているのだ。これだけの注目の的となっているのはもちろんゼロス要塞である。
大妖精「チルノちゃん……、あの緑色のやつ本当に落っこちてくるの?」
はやし立てる者、逃げ惑おうとする者、ただただ訳も分からず踊りまくっている者。様々なやかましい反応を見せる妖精たちの中、少しオドオドしながら友達に話しかける彼女は異彩を放っていた。
チルノ「へ、へんっ! おっこちてこようともあたいが蹴散らしてやるわ! それともピューンってあっちへ飛んでいって凍らしてやってもいいわね! だから大ちゃんはなんにも心配いらないよ!」
大見得を切る氷精であったが、チルノ自身もどうすればいいのか分からないままであった。でも友達が怯えている。自分まで弱気になってしまってはいけない。だからこそいつも通りの振る舞いをしているのだ。
大妖精「む、無茶だよ……。すっごく大きいんだよ? 落っこちた時点で大惨事になると思うの。それにあの円盤は空のずっとずっと上の『宇宙』ってところにあって、そこに辿り着くには『大気圏』ってのを抜けなくちゃならないの。そこはとっても熱い所らしいわ。いくらチルノちゃんでも……」
チルノ「うう、あたい熱いのニガテ……あれ、なんか飛んでる!?」
氷精の青い瞳が映し出したのは緑色の円盤に一直線に立ち向かう銀色の光。キラリと光るそれは超時空戦闘機「アールバイパー」が描く銀色のラインであった。それを指差してチルノはドヤ顔で胸を張る。
チルノ「大ちゃん、何も心配する事はないよ! ほらアレ! 銀色の光りがピューって飛んでる。アールバイパーがやってくれるみたいだ!」
大妖精「へ……?」
まあ当然の反応である。大ちゃんはアールバイパーとの面識がないのだから。
チルノ「『チョウジクウセントウキ』の『アールバイパー』だよ。あたいのマナデシかつ、えーえんのライバル! あたいがちょっと鍛えたらあのスキマババアもやっつけちゃったんだよ! 最強なあたいのオスミツキだし、あの円盤もサクっとぶっ壊してくれるよ!」
まるで自分の手柄のように大笑いしながら空を見るチルノとは真逆の反応を見せる大妖精。大丈夫かなぁと心配しながら円盤を見つめるのであった。
チルノ「ほら、アイツを信じられないの? アイツを信じないって事はあたいを信用していないって事にもなるのよ! さあ、アールバイパーが上手くやってくれるように応援しないと! ガンバレー、ガンバレー!!」
訳も分からずはやし立てるように空に向かってエールを送る。他の妖精達も趣旨が分かっているのかいないのか、思い思いの応援の言葉を空に投げかけていく。
霧の湖ではかつてない程の大声が何度もこだましていた……。
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名前:聖白蓮
身体強化率326%
お姉ちゃん!
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