椛と交戦し逃がしてしまった以上、いつ天狗が襲撃してくるかわかったものではない。ここで取りうる選択は、大人しく引き下がるか強行突破するか……。いやいや、天狗のお偉いさんに会って誤解を解いてもらうのが一番だろう。鴉天狗の足の速さや執念深さは文を通じてある程度理解しているつもりだ。放っておくとロクなことにならない。

レーダーを頼りに進行方向を決めるのだが、突如レーダーに強大な魔力が急接近しているのを確認。これだけ速い魔力の動きは……弾幕かっ! 俺は身構えて回避動作に入ろうとしたが、弾幕などどこにも見当たらない。

貴方「どこだ……?」

周囲を警戒し迫る脅威を探し出すのだが、待てども待てどもそれらしきものは出てこない。いや、2時の方向に……違う、6時? いやいや9時の方向??

???「おっと、それ以上動くな」

結論から言うと全部正解。いつの間にか俺は多数の白狼天狗に取り囲まれていたのだ。そして12時、つまり真正面に現れたのは狼のような耳を持たず、漆黒の翼を持った天狗……鴉天狗であった。射命丸かと一瞬期待したが、どうも容姿が全然違うようだ。

全体的に白と紫のイメージが強く、帽子も紫色、ツインテールをまとめる髪飾りも紫色。ついでにスカートもチェック柄の紫。知らない天狗だ。

白狼天狗「はたて様、一気に確保しましょう!」

詰め寄る白狼天狗を「はたて」と呼ばれた鴉天狗が制止する。こいつ、目的は何なんだ?

はたて「とある白狼天狗からタレコミがあったのよ。ノッペリとした変な鳥の妖怪が妖怪の山に侵入したと」

俺に向けるのは携帯電話だろうか? いや、小さいレンズがついているのであれも一種のカメラなのだろうか?

貴方「だからノッペリとした変な鳥の妖怪じゃなくて超時空……じゃなかった。俺はただ守矢神社に向かいたいだけだ。勝手に戦闘を仕掛けたのはそっちじゃないか!」

はたて「分かっているわ。それは道具なのでしょう? 最近になってアレが増えてきたのよ。ちょうど流れ星を多く観測するようになってからだったかしら?」

増えてきた? 何が? まさかアールバイパーがたくさんいるだなんてことは考えられまい。

はたて「『付喪神』よ。道具が何らかの理由で暴走して妖怪化するというアレ。迷惑な付喪神は徹底的に叩きのめして元の道具に戻すべきよ。そしてその道具もきっと暴走している」

つ、付喪神!? アールバイパーは正真正銘の乗り物だ。俺が操縦しているんだからそんなわけないだろう。

貴方「バカなことを言うな! これは乗り物だ。俺が俺の意思で操って……」

はたて「大変! 持ち主まで道具に乗っ取られているわ。コテンパンにしてもう悪さできないようにしてやりましょう!」

「だから違うわー!」という俺の悲鳴は次々と襲い掛かる天狗たちの雄たけびにかき消されてしまった。


銀翼と妖怪寺TFV IVに続く……
あとがき

名前:聖白蓮
身体強化率326%

お姉ちゃん!

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