先ほど神奈子さんと対峙した時に発動していたスペルだ。まさかここまで強力なものだったとは……。あんなに重い上に速く動く物体はリフレックスリングでも掴めない。捕えることはできるだろうが、そんなことをしたら御柱に引っ張られてしまうのは明白である。
貴方「しまっ……」
考え事をしていた隙を突かれ、銀翼は熱された御柱の直撃を受けてしまう。思い切り地面に叩きつけられ、小さなクレーターを形成してしまう。いまだにチカチカする視界。銀翼はほどなくして息を吹き返していた。……まだ潰れていない。
朦朧とした意識の中、再びアールバイパーは飛翔。今度こそと言わんばかりに今度は遠方からツインレーザーを発射する。避ける動作を見せない神奈子さんに青い光の針が突き刺さっていくものの、さほどダメージも入っていないのだろう。勢いが全然衰える気配を見せないのだ。
今度は御柱など比べ物にならないほどの米粒弾が迫ってくる。とっさに俺は菊一文字を放った……が、先ほどのダメージでアールバイパーの出力が低下しているのか、ポッドが力なく落ちていって地面でバリアを展開していた。
完全に防御に頼っていた俺は弾幕をもろに受け、機体がグラグラと揺れる。ダメだ、本気になった神奈子さんは格が違い過ぎる。
だが、思わぬ収穫も得た。菊一文字を出力を落として発射すると縦長の爆風を残す対地ミサイルとして機能するのだ。まさかこんな形で「
バーティカルマイン
」を再現するとは。
もっとも今の戦闘で空対地ミサイルはそう役に立ちそうにない。これだけの強敵、俺一人で手に負える代物ではないのだ。
貴方「早苗っ。お願いだ、援護してくれぇー!」
気持ちは分からないではないが、早苗さんがまるで戦えないでいる。銃口をそちらに向けるまではいいのだが、その先が動かないようだ。
早苗「……出来ません。だって神奈子様を……。それに、嫌な予感がするんです。だって人に取り付く付喪神だなんて絶対におかしいですよ。アレは本当に付喪神なんですか?」
もう夕暮れ時なのか、茜色に染まりつつある守矢神社、その上空で暴走を続ける神奈子さんの瞳の色も琥珀色。確かにただの付喪神と片づけるのは早計かもしれない。実は思い当たる節がないわけではないが、俺はそれを認めたくはない。それを認めてしまうということは俺の手で神奈子さんを……葬らなければいけなくなる。
ぞわと俺の背筋が震える。これが狩るか狩られるかということか、おそらく早苗さんも同じものを想像しているのだろう。俺の腕が鈍る。
しかも早苗さんの場合は俺の場合と更に事情が違ってくる。今の今まで親しくしていた、傍にいるのが当たり前だったそんな人を殺さないといけないということになるのだ。
そんなの戦いを生業とする軍人でさえ即決はできないだろう。ましてや遊びで弾幕ごっこを興じるだけの少女に課する荷にしてはあまりに重すぎる。
だが誰かがやらねば。ならば俺が……たとえ刺し違えてでも……
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名前:聖白蓮
身体強化率326%
お姉ちゃん!
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