日が沈んでいく。琥珀色の光は弱まり夜のとばりが降りてきた。二人の追跡者からただただ逃げ惑う。
でもどこへ? 人里へも向かえない、紅魔館にも居場所はない。俺の本来の居場所であった命蓮寺はもうない……。
そう考えているうちに銀翼は暗い場所へ暗い場所へと追いやられていく。
暗闇に身を潜める。二人の追手はキョロキョロと周囲を見渡して俺の姿を探しているようだが、ついに諦めると立ち去っていった。どうやら俺の隠れた場所にはいないと思ったのか一度も視線がこちらに向かなかった気もする。
すっかり日は落ちてしまい自分もがむしゃらに逃げてきたのでここがどこなのかわからない。連戦で疲れ果てた俺は一度アールバイパーから降りる。夏の夜とはいえヒンヤリと、そしてどこかどんよりとした湿った空気。嫌な感じではあったがでもコクピットに籠りきりよりはマシである。
本当に地上に戻ってから分からないことだらけだ。何故か追われる身になった自分、荒れ果てた命蓮寺、時間の止まったはずの空間で動くはずのない謎の影。そして姿を消した白蓮さん……。
向かうところ敵ばかり、味方などどこにもいない。今はどこにも……。
命を張って俺を守り抜いてくれたジェイド・ロス提督も、死の淵から目覚めさせてくれた命蓮も、辛いことも嬉しいことも共有できた白蓮さんも……今はいない。俺は一人ぼっちだ。俺は……
貴方「うううっ……。俺一人で何すればいいんだよ……」
絶望感に苛まれ、俺はただただ涙した。俺は、本当にバイドに取り込まれていずれ醜い肉塊になってしまうのだろうか? 泣いた、それこそ号泣した。夜のこんな暗い場所で大声を上げるのは自殺行為だ。野良妖怪に襲ってくれと言っているようなものである。
でも今の俺はそれでもいいとさえ思っていた。それだけ絶望していたのだ。手渡された白いハンカチを受け取るとそれで涙をぬぐい、泣き続けた。
しかしこれだけ大きな声を出しているのに、飢えた獣も追手もまるで現れない。あまりに陰気くさい場所だ、妖怪すらも寄り付かない場所だったのかもしれない。
ふと俺は饅頭を差し出されていた。確かにこういう時は甘いものでも食べたい気分だ。俺は涙に濡れたハンカチを渡すと代わりに饅頭を受け取り、口に運んだ。
すっかり涙を流し切り幾分気分はスッキリしたものの、この状況を打破したわけではない。そんな折、周囲の空気……というかモヤモヤががわずかに動いた気がした。
俺は微かにした物音に向かってフラフラと歩みを進めた。アールバイパーから離れるのはあまりに不用心ではあったが、襲われたら襲われただと自暴自棄になったままであったのだ。それにしてもあっちに誰かいるのか……?
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名前:聖白蓮
身体強化率326%
お姉ちゃん!
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