その姿は……いや、それを確認する前に敵意を持った何かの接近に気が付いた。
夕焼け色に染まる湖から色が失せたのだ。モノクロの視界をよく見ると水のさざめきすら失われているのが見える。これはまさか……。
接近していたのは空飛ぶ銀髪のメイドであった。恐らくこの湖のほとり「紅魔館」の咲夜で間違いないだろう。指の間に何本ものナイフを挟んでいることからさらさら会話する気などない事は明白である。
そのままこちらの姿を確認するとナイフを囲い込むように投げつけてくる。時間が止まっているので、ナイフの刃がこちらに向かって空中にピタリと止まって浮いているだけではあるが。
恐らく何かしらの飛び道具で撃ち落とそうとしてもあのナイフのように弾丸が浮遊したままになるだろう。だが、今の俺はあの時とは全然違う。弾幕殺しの蒼き剣「レイディアントソード」がある。
加えてこの超時空戦闘機には時間に干渉する能力は受け付けないという特性もある。さてはあのメイド、そのことを忘れているな? 俺は剣を振り回し、向けられたナイフを薙ぎ払った。
貴方「無駄無駄無駄ァ。アールバイパーに時止めが通用しないのを忘れたのか、このマヌケがぁーっ!」
能力を真っ向から否定し押し潰したことから異様に高揚する俺。だが、屈辱と驚愕に歪んだその顔は、かつての敗北の雪辱を晴らすにはまだ足りない。止められた時間が戻っていく。バラバラとナイフははじけ飛び湖へと落ちていく。
咲夜「お嬢様の……お嬢様のっ!」
いかんいかん、リベンジを果たすのではなくてなぜ咲夜が敵意むき出しなのかを突き止めなくては。お嬢様、つまりレミリアだが、俺は一体レミリアに何をしたというのだろうか? 当然ながら俺はしばらくあの500歳児と会った記憶はない。
貴方「つまり、俺はレミリアに何かしたという事か。あいにく俺にはその時の記憶がない」
咲夜「ふざけないで! 貴方は散々館で暴れ回ったのよ。お嬢様の場所をあんなに踏みにじって……許せない!」
記憶がないのは本当だ! それでも交戦は避けられないようだ。俺とて咲夜さんとは初戦ではない。逃げようとすると自らの時間を加速させて追いかけるだろう。ここでキッチリ決着をつけなくてはいけない。つまり逃げるという選択は……ないということだ。
貴方「どうしてもやるつもりか? 上等だ。俺は俺でお前には借りがあるからな。ここで雪辱を晴らす!」
こんなことしている場合ではない。そんなことは分かり切っている。だが交戦は不可避。ならば、とことんやってやろうじゃないか。俺はロックオンサイトにメイド長を捉えた。
銀翼と妖怪寺VG I後編に続く……
名前:聖白蓮
身体強化率326%
お姉ちゃん!
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