カチ、カチ、カチ……。秒針が時を刻む音だけが静寂の中響いていた。
俺達はネメシスが真っ二つにされたショックで意識が朦朧とした後、雛とにとりに連れられて魔法の森のアリスの家を訪問していたのだ。目的はもちろんネメシスの修理である。
夜もふける中、俺は一睡もできずにアリスの工房へつ続く扉をただただジッと見つめ、秒針の音をぼんやりと聞いている。
心配しているのはなにも俺達だけではない。同じオプションとして後輩二人もその身を案じているようだ。
ゆっくり霊夢「ネメシスちゃん……」
コンパク「……」
にとり「あー、オプションを失ったから……ってわけじゃないよね。流石に私もわかるわ」
生まれたばかりでまだ制御もままならないまま、腰にロープを括り付けて紅魔館のメイド妖精達やレミリアと戦った記憶、オプションとして八雲紫を倒し幻想郷で生きていく権利を勝ち取った記憶、初めての妹分「コンパク」と出会い、何処か嬉しそうだったり姉貴分として振舞おうと頑張っている様子を横から見てなごんでいた記憶……。
貴方「本来はぎこちない動きしかできなかったのに、気付いたら動きは滑らかだし気遣いまで覚えていった。どんどん成長していったあの子は俺にとっては娘同然だったんだよ……」
その記憶を一瞬で引き裂いた青娥。こみ上げる怒りも尋常ではないものであったが、それよりも心に大きくのしかかっていったのは悲しみの方。そんな中複数の上海人形が紅茶を手にやってきた。
上海人形「シャンハーイ……」
客をもてなす為にアリスが用意したのだろう。その姿がネメシスと重なり、俺は人形のうちの1体を抱くと大泣きした。
上海人形「ワッ、ワッ、ワワッ!?」
ひとしきり涙を流した後、我に返ると俺は上海人形を解放し、乱れてしまった髪の毛を整えてあげた。
貴方「ごめんよ。でも、どうしても我慢できなくなって……」
人形たちが再びアリスの部屋に戻っていくと再び静寂が訪れる。それでも規則的に音を刻む秒針。時計を見るとすでに日付をまたいでいたことが分かった。
そして紅茶も冷めかけた午前2時、ようやくこもりっきりだったアリスが部屋から出てきた。
彼女の表情は晴れない。手にしていたのはいまだに真っ二つのネメシスであった。
アリス「ごめん、私には修理できないわ」
非情にも復活は不可能であることを通告されてしまった。ああ、なんということだ……。
俺はガクリと膝から崩れ落ち、娘の名を叫びながら男泣きに泣いた。
銀翼と妖怪寺VG Xに続く……
あとがき
名前:聖白蓮
身体強化率326%
お姉ちゃん!
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