(その頃人里では……)
もうじき陽が落ちる。琥珀色の光に照らされながら、神子はただ空に目をやり続ける。ぼんやりしていると彼女の前に一輪が降り立った。
一輪「神子……様、講演会は無事に終了しました」
その名を口にする度、一輪は苦虫を噛み潰したような表情になってしまう。当然である、かつての商売敵の軍門に下ってしまったのだから。それでいて、自らの手で商売敵の宗教を推し進める活動をしている。これほど残酷なことはないだろう。
これだけ血反吐を吐くような思いをしている一輪。だというのに肝心の神子は風にマントをなびかせながら空を憂い気に見つめたままである。まるで反応しない。心ここにあらずといったところか。
布都「太子様は日々の政に追われてお疲れである。代わりに我が聞こうぞ」
仕方なく一輪は布都に状況を報告する。より一層嫌悪感をその表情に出しながら。
布都「うむご苦労であった。今日はもう休んでよいぞ」
それに気づいているのかいないのか、ふんぞり返りながら布都は上機嫌に一輪を送り出した。そんな童顔の仙人を尻目に、屈辱にその表情を歪めつつ、一輪は下がっていく。これだけ空気がピリピリしていたのに神子は相変わらず空を見つめたままである。
布都「太子様の提案した『かつての商売敵に我々の宗教を説かせる』ってのが思いのほか効いているようですよ。民衆に力関係をはっきりとさせることで我ら道教の勢いは増すばかり。さっすが太子様!」
これだけ褒めちぎっても神子の反応は薄い。が、あまりに騒ぎ立てるので神子はついに空から視界を地上に移した。
神子「ああ、しかし上手くいき過ぎだとは思わないかい? まるで誰かに用意された線路の上を走っているかのように事が上手く運びすぎている。私はそれが逆に怖い」
それだけ言うと神子は再び空を見上げてしまう。
神子「それにあの英雄気取りの魔住職の使い魔、確か○○といったか。奴が静かすぎる」
つぶやくように口にするとどこからか甘ったるい声が響く。
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名前:聖白蓮
身体強化率326%
お姉ちゃん!
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