そして待つこと十数分……。小型クラブ(確か「キャンサー」って名前だった)に運ばれた火山の形をしたケーキが飛び出してきた。中心からは火山弾を模した何かが飛び散っており、ドロリとチョコレートソースらしきものもあふれ出ている。

早苗「あっ、『アイアンメイデン』までついてる。分かっていますねぇ~♪」

随分と気合の入った造形。一口えいっと口に運ぶとアツアツで柔らかな感触からふわりと感じるチョコレートの味。若干薄味かと思うと濃厚なソースが絶妙な味を引き立てている。

にとり「うまい……!」

ああ、同感だ。甘いものは別腹と言わんばかりに俺達はあっという間に火山を完食してしまった。

テトラン「よかったー、こっちは気に入って貰えたようね」
貴方「ああ、だけどなんで食事処なんてやってるんだ?」

とっても素朴な疑問。永遠亭でのバクテリアン異変では恐らく生き残りはいない。まあ相手があのバイド以上のしぶとさを誇ると言われているバクテリアンなので復活したと言われれば納得はしてしまうが、それにしたって復讐とかではなく、レストランを経営しているのである。

テトラン「実はね、幻想郷そのものを支配しようとゴーファー様の下で色々やってきたけれど、そのゴーファー様も復活しそうにないし、今度は私自らが幻想郷を支配しようって思ったのよ。そう、幻想郷の食を……ね。それで今は料理の勉強中」

俺が真っ先に思い出したのは妖怪の山の麓で秋姉妹と一緒に農作業にいそしんでいた芋コアこと「ブラスターキャノンコア」。こうやって幻想郷(ここは厳密には違うけど)で受け入れられるようにと色々とがんばっているのだな。

早苗「特にスイーツが美味しかったですよ。これからはスイーツに特化してみてはどうでしょう?」

ぱぁっとテトランの表情が晴れる。異変が関わらなければあのバクテリアンもこんな調子である。一歩一歩、幻想郷の住民と分かり合おうと手探りで前に進んでいるのだ。

きっと俺の知っている白蓮さんがこのことを知ったら応援するに違いない。彼女の理想に近づけた……と。だからこそ、俺は白蓮さんを助け出したい。悲しい嘘に縛られて、動けなくなってしまった白蓮さんを……。

お代を支払うと、決意を固めた俺達は今度こそ氷雪世界へと向かう。

後に「甘味処『ばくてり庵』」の女将としてテトランは幻想郷にやって来ることになるのだが、それはまた別の話だ……。




名前:聖白蓮
身体強化率326%

お姉ちゃん!

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