(幻想郷某所、嵐の夜……)


しく……しく……しく……。ザアザアと雨が降りしきる中、ゴロリと転がった生首はその生気を失った両目から涙を垂れ流していた。断じてゆっくりではない。生首なのだ。

恐らくは胴体と繋がっていた頃は美しかったであろう乙女の無残な成れの果て。特徴的な青い髪の毛はボロボロになっており、その髪型が完全に崩れている。瑞々しかったであろう肌も雨に打たれて紫色に禿げ上がっている。化粧でもしていたのか、肌色に顔が塗られていたようなのだ。

見るも無残な生首は涙を流し続ける。いや、雨に打たれているだけなのか遠目には判別がつかない。

だが、彼女は自業自得なのだ。己の為だけに多くの人たちを巻き込み不幸のどん底へと叩き落としてきた。のらりくらりとかわしてきた彼女もとうとう捕まってしまい、各勢力からあらん限りの制裁を受けた。その結果がこのみすぼらしい生首である。

???「おおよしよし……。こんなになるまで頑張るなんて」

大雨の中、天女が舞い降りる。生首は彼女の姿を見るや否や、今度は大泣きし始めた。

生首「うわぁーん、寂しかったよー! 妖怪には蹴っ飛ばされるし、野犬には食べられそうになるし……」

泣きじゃくる生首を愛おしそうに抱きしめる天女は、そのまばらになった頭髪を優しく撫でる。

???「ごめんなさいね。ほとぼりが冷めるまで回収が出来なかったの。だけれど、わたくしの身代わりになってこんな役を買って出るなんて、とっても嬉しいですわ♪」

それだけ口にするとどこからか集めてきた死体の切れ端をせっせと首から下にくっつけていく。

その手際はかなり良く、生首はあっという間に人の形を取り戻した。だが、まだ肉体がなじんでいないのか、特に関節の動きがぎこちない。ピョインピョインと跳ねながら移動する様はキョンシーそのものだ。

???「出来たわよ、芳香。わたくしのコスプレもいいけれど、やっぱりこの格好が一番落ち着くわね」

稲光が周囲を照らす。そこには○○が倒したはずの青娥の姿があった。

芳香「わーい♪ せーが大好きー!」

相方のキョンシーを慈愛の眼差しを向けながら抱きしめるは邪仙。そう、青娥は生きていたのだ。




名前:聖白蓮
身体強化率326%

お姉ちゃん!

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