思わず漏らした声に違和感を覚える。試しに「あー」とか「おー」と口にしてみると、声が元に戻っていることに気が付く。自分の声だというのに、随分と懐かしい……。

αビームのカウンター効果によって体内の毒素が全てエネルギーに変換されて出ていってしまったのだろう。とんでもない荒療治である。

何はともあれ、やっと……男に……戻れた……。

安堵の気持ちを持ち、鈴蘭畑へと降り立つ。何故か恍惚の表情を浮かべてうわ言のように「コンパロー」と口にしていたので、我に返るようにと大声で彼女の名を叫んだ。

貴方「俺の勝ちだな。約束だ、ネメシスを返してくれ」

我に返った彼女は悔しそうに唇を噛んでいたが、遂に観念したのか、無言でネメシス人形を差し出した。

姿も男に戻り、ネメシス人形も戻って来た。勝つためとはいえスーさんを犠牲にしてしまったことが悔やまれるが、この鈴蘭畑をちゃんと守っていけば、いずれまた姿を現すだろう。

メディスン「姿が戻ってる……。そう、さっきのビームで毒素を全部抜いてしまったのね。まさか自分を蝕む毒すら攻撃の力にしてしまうだなんて……」

一言に毒といってもその使い方によっては立派な薬にもなるのだ。現に鈴蘭の成分も使い方を誤らなければ薬になるともいう。

逆にメディスンは自らのエネルギー源である毒を必要以上に浴びて中毒のようなものになってしまった。どんな良薬も使い方を誤れば毒になるということだ。

もう用事も済んだし、そろそろ帰ろうと身支度をする。その裾を掴む手があった。

メディスン「アンタは悪い人じゃないみたいだ。人形の為にここまで命を張れたんだもの。あの銀色の翼が気に食わないけれど、もうつけ狙うのはやめる」

そいつは良かった。

貴方「鈴蘭畑とスーさんの件はすまなかったな。畑、ちゃんと守っていけよ。アイツが返ってこれるようにな」

振り向くことなく、俺はアールバイパーに乗り込み、そして家路に向かうのであった。

夕陽を受けて、アールバイパーの翼が金色に輝いていた。



名前:聖白蓮
身体強化率326%

お姉ちゃん!

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