俺は厄にまみれた空間に迷い込んだ妖精に紫色をした毒ボールを投げつけただけだ。俺にはボールをぶつけられた妖精が毒に苦しみ悶えるか、はたまた物理的にボールをぶつけられて痛がるかくらいにしか想像できなかった。

だが、結果はそのどちらでもなかった。

俺の右手に電気のような衝撃が走る。冬場に金属に触れて静電気が走るような感覚、アレの強力な奴だ。

思わず手をビクンと震わせるが、その手をよく見ると、毒ボールと右手がまるで紫色の電気が繋がったかのようになっている。妖精は紫色のボールに包まれ、うつろな瞳のまま、こちらに寄って来た。不用意に飛倉の欠片を手にしてしまい、変なものに取りつかれたかのように見える。

雛「やるじゃないの。大成功ね! これでしばらくその妖精は貴方の思い通りに動くわ」

はしゃぐ雛であったが、自らのしたことに俺は体中から震えが止まらなくなっていた。生き物を洗脳してしまった……。こんなことって……

雛「メディちゃんの傍にいる『スーさん』もこれで動かしているって話よ? それより次の段階へ移るわ。今度は毒ボールを破裂させるようなイメージを持って……」

嫌な予感がするが、反射的に脳裏にイメージが浮かぶ。

直後、うつろな目をした妖精は爆散した。これはまるでオプションシュート……。だが、あれで爆発させているのはあくまで人形を纏っていたオーラであって、本体ではない。

口をあんぐりと開け、唖然とするしかなかった。罪のない妖精を殺してしまった……! この俺の手で……。

ガタガタと震える俺の目の前で両手を振る雛。いやいや、意識はちゃんとあるぞ。

雛「あ、あの……聞いてる? あの子には可哀そうなことをしてしまったけれど……。でも妖精は死なないわ。媒体となる自然さえ残っていれば、時間を置いてまた復活するものなの」

そ、そうなのか。せいぜい体を失って1回休み程度のことらしい。だが、あまりに現実離れした光景に俺はやっぱり動くことが出来なかった。

相手の思考を狂わせてこちらの制御下に置いて、いざという時は爆破させることができるというヤバげな兵器だ。
とはいえ、制御下におけるのは妖精くらいのようだ。人間や賢い妖怪のような高度な思考回路を持った生き物にはボールが弾かれてしまう。それは実証済みだ(練習中に雛にボールを当てて怒られたこともあったのだ。も、もちろんワザとじゃないぞ)。



名前:聖白蓮
身体強化率326%

お姉ちゃん!

お気に入り登録登録済み一覧

セーブデータ
新規登録・ログイン・マイページはこちら