(夜寝る前)
(ボウイはあの胡散臭い店主の言った言葉を思い出していた)

「最高に愛された少女は、時として涙を流します」
「それは結晶化し、素晴らしい宝石の雫となり少女本体よりも高値で取引されます」
「天国の涙、と呼ばれるのですがね」
「その色は最後に少女が見た風景に関係すると言いますよ」
「さて、貴方様はこの子に天国の涙を流させられるでしょうか…」

(…確かこんな事を言っていた筈だ)

(天国の涙、な)
(大層な名前が付いた物だ)

(最高の愛を受けた少女だけ、か)
(俺にそんな事出来るか)

(…それにしても涙って事は何か悲しい事があるんだよな)
(あいつが、泣くのか…)

(見てみたい気もするが)
(泣かせるのは…)

(何を考えてるんだ俺は)
(…もう寝よう)

(ふとボウイがベッドを見るとすやすやと眠る貴女が)

(最高の愛、か)
(ボウイは貴女の眠るベッドの近くに椅子を持ってくると、其処に腰かけて目を閉じた)
天国の涙