ほ、本当に?
じゃあ…話すよ?
これは僕が子供の頃に、親戚の叔父さんから聞いた話なんだ
ある所に青年が居たんだって
学生で、同じ学年に付き合っている彼女がいたんだけど、凄く仲が良くてお互い卒業したら結婚の約束までしていたらしいんだ
でもある日彼女が交通事故で死んでしまったんだ
車の運転手の脇見運転で轢かれちゃったんだって…
彼は絶望してすっかり抜け殻の様になってしまってね、学校も休みがちで彼女と同居していた古いアパートに篭りっきりの生活になったんだって
少しでも彼女の思い出に触れていたくて、居間も台所も風呂も玄関も寝室にトイレにまで彼女との思い出の写真を置いて、何時でも目に入るようにしていたんだ
そんな彼を心配して、友達が部屋に出入りして励ましたけど、全く反応が無い
彼の真上の部屋は小さな教会になっていて、彼と仲が良くて歳も近い神父も励ましに来ていたけど、それでも効果はなかった
毎日、飢えない程度の粗末な食事をして、彼女の写真を見つめて過ごす日々が続いたんだって
そんなある日、彼は子供の頃に聞いた話をふと思い出した
「死者と必ず会える方法がある」
その方法っていうのが、
「時刻は、深夜2時前後が良い。まず、会いたい死者を思い浮かべる。その死者の遺品があればなお良い。家の門は開けておく。ただし、家の戸締りは完璧に行う事。
遺品を胸に抱き、蝋燭1本にだけ火を灯し、部屋の灯りを消し、ベッドに入り目を瞑る。
そして、死者が墓場から這い出てくるのを想像する。生前の綺麗な姿のまま…
死者は、ゆっくりゆっくり、自分の家に歩いてくるのを想像する。
1歩1歩、ゆっくりと…そして、門を通り、玄関の前に立つのを想像する」
想像するのはそこまでなんだ
そして、絶対に守らなければいけない事は
「死者が何と言おうとも、絶 対 に 家 の 中 に は 入 れ な い 事」
それでね…