くっ…チョコマカと…

(不知火は主砲を乱射するが、ある時は霊体化し、ある時は華麗に身をかわすアサシンの動きをまるで掴めずにいた)

…舐めた真似を…!

(仲間の身体を足場にするアサシンに対して、仲間を傷つけまいとする不知火の僅かに残った理性が、その照準を余計に鈍らせていた。その時…)

「てえーっ!!」

ドウッ!!

(全く異なる角度からの砲撃に、アサシンは避けきれずかすり傷を負い、ひとまず距離をとった)

長門「焦るな不知火、お前らしくもない」

しかし…

長門「相手の動きをよく見るんだ。奴の動き…何か気付かないか?」

何かって…奴は皆の身体を踏み台にあちこち……はっ!

長門「そう、敏捷性も動きの巧みさも奴が数段上だが、奴は飛ぶことも浮くことも出来ない。そして…」

ドゴォッ!!

(長門の拳がアサシンを捉え、アサシンは堪らず飛び退いた)

長門「それ故に動きは見える。動きの可能性は限られている…ならばその総てに対応するだけでいい」

天龍「----長門ッ!」

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

(話は少し遡り、長門が天龍の前を去った少し後)

天龍「くそっ、みんな…」

『…ガ…れか…誰か聴こえてますか、こちら霧島…』

天龍「霧島かっ!こちら天龍!」

霧島『ああ、良かった…!皆倒れてしまったのかと…そっちはどんな状況?』

天龍「どうもこうも…なんか突然みんな同士討ちを始めて…そしたら急にでけえ音がしてみんなぶっ倒れやがった…今長門と不知火が戦ってる」

霧島『あー、やっぱり…やりすぎちゃったわね…』

天龍「いや、あんたが止めてくれなかったら皆死ぬまで戦ってたさ…助かったぜ」

霧島『ありがと。こっちも一応皆無事。司令も倒れちゃったけどね。どうする?そっちに戻ったほうがいいかしら?』

天龍「……いや。先行してくれ。アイツはマジでヤバい。せめて提督だけでも早く“朝”まで連れて行くんだ」

霧島『…分かったわ。そっちも…どうか無事で…きゃあっ!?』

(ガガッ…ガチャッ!)

天龍「霧島!?おいどうした霧島!----長門ッ!」

天龍さん!いったい…

天龍「不知火…霧島との通信が切れやがった…何かあったんだ…あっちで動けるのは今霧島だけなのに…」

そんなっ…司令は!?

天龍「馬鹿、余所見すんな!!」

長門「ぐうっ!」

(思わず振り返った不知火をアサシンが強襲したが、長門が身を呈してそれを庇った)

長門さんっ!?

長門「行け!不知火!」

----え?

長門「提督のことが心配なのだろう?…提督も、きっとお前を必要としているだろう。行ってやれ」

しかし……

長門「いいから行け!コイツは私が引き受ける」

そんなっ…長門さん1人で!

長門「不知火!!私を誰だと思っている!」

あ…

長門「世界のビッグセブンが一、長門とはこの私のことだ!私を倒さぬ限り、この先には何者も通さん!」

天龍「一応、世界水準越えの軽巡様もついてるぜ?」

長門「ふっ…休んでいろと言ったはずだが?」

天龍「へっ…聞かねえよ。…行けよ不知火!提督が待ってるぜ!」

天龍さん、長門さん…!どうか…無事で…!!

(駆け出す不知火を、天龍と長門は背中で…アサシンは不敵な笑みで見送った)


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