ふん、弱いのね…

霧島「不知火!」

霧島さん!…司令は!?

霧島「大丈夫よ。気を失ってるけど、ちゃんとそのクルーザーの上に…」

司令!!

(霧島が言い終わるのを待たずに、不知火はクルーザーに飛び込んだ。そして、気絶した提督に駆け寄り、その身体をひしと抱きしめた)

司令!よかった…本当に…無事で…!

「…やれやれね」

(同じくクルーザーに乗り込んだ霧島が、呆れたような声を出した)

霧島「お熱いところ悪いけど、まだ戦いは終わったわけじゃないでしょう?」

ええ、天龍さんからの通信は聞こえています。まだ――

霧島「聞かせて!すぐに!!」

何を焦って……ハッ!?

(不知火も重大な事実に気づき、大急ぎで予備の子機を霧島に手渡した)

(ガガッ)

天龍『捕まえたぞ、クソガキ…!長門ォ!』

く…やはり、まるで“見たことのない敵と”天龍さんたちが戦っているように聞こえます…!

霧島「貴女もなのね、不知火。敵の“記憶を消す能力”、想像以上ね…実際、通信が途切れて以降、私はお姉さまたちが気絶している経緯を含めてほとんどのことを忘れているわ」

それについては、不知火も同様です。しかし、一つだけ確かなことがあります。それは、“敵が高い隠密能力をもち、司令を狙った奇襲を成功させた”ということです。

霧島「どうして、そんなことが…?」

現在不知火たちが置かれている状況です。当初の作戦で、“敵が奇襲を成功させうる隠密能力を持っている場合は、クルーザーと金剛型のみで東へ先行する”と取り決めてありました。この記憶は敵に関する直接の情報でないからか、消されずに残っています。つまり…

天龍&長門『撃てー!』

!?…天龍さん!長門さん!

天龍『ああ、これで、やっと…ガッ』

アサシン『いたいな、びっくりしちゃった』

霧島「く…なんてこと!あの二人が…」

霧島さん、時間がありません。おそらく、敵の声が聞こえなくなった時点でこの通信で手に入れた情報も消されてしまいます。そして、敵は記憶を失った我々に必ず奇襲を仕掛け、それを成功させます。いいですか、不知火たちにできることは“初撃を耐えて反撃に転じること”のみです。

霧島「それじゃあ…もし奇襲が司令を狙ったものだった場合は…?」

…そうならないように祈るしかありません。せめて、攻撃しにくいように身体を盾にして…

霧島「……」

…霧島さん?

霧島「…確実ではないけれど、確率を下げる方法ならあるわ。いい?――――…」

……かなりの無茶ですが、やってみる価値はありますね。不知火ならば今の作戦を覚えていることができるはずです。すぐにでも…

アサシン『うう、いたいな マスター』

(…“マスター”?)

アサシン『うん、もういたくないや』

……!記憶が…消えました!もう一刻の猶予もありません!

(ほとんどの記憶を失って戸惑っている霧島を急かして、不知火は“作戦”の準備に取り掛かった)


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