(半ば挑発するようなアサシンの言葉に、青葉・衣笠・陸奥の3人は主砲を向けることで応じた。しかし--)

雪風「待って。待ってください!」

(アサシンを庇うように立つ雪風に、3人は揃って怪訝な顔をする)

陸奥「どういうつもり、雪風?」

雪風「も、もう戦う必要はないはずです!あの子だって、目的を達成したと言ってました。これ以上戦って、犠牲を増やすことは…!」

衣笠「…残念だけど、そういう訳にはいかないのよ。今ここでそいつを取り逃したら、いつ同じように襲ってくるか分からないでしょ?」

陸奥「たとえ犠牲を払ってでも、倒さないわけにはいかないの」

青葉「……」

衣笠「さ、分かったらそこを退いて」

雪風「っ……」

(そこまで言われれば、雪風も引き下がる他はなかった。いや、雪風もアサシンを逃してはならないことは承知していた。しかし、自分でも何故かは分からないが、アサシンを庇わずにはいられなかったのだ)

青葉「……」

(そんな雪風の表情を、青葉は先ほどから無言のまま観察していた。そして--)

青葉「……ふふっ」

衣笠「青葉?」

青葉「くっくっくっくっくっ……あーっはっはっはっはははは!」

衣笠「!ちょっと青葉!どうしたの!?しっかりしてよ!」

(主砲を下して哄笑を上げる青葉の姿に、衣笠ははじめ恐怖のあまり気がふれたのかと案じた。しかし、青葉の表情は恐慌をきたしたもののそれではなかった。かといって勝利を確信しての笑いにも見えず……強いて挙げるなら、その表情は“強敵と相見えたときの不知火”に似ていると、衣笠は思った)

青葉「くっくっくっく……いやあ失礼、雪風さんの話を聞いてたらね…くっくっく、全く青葉らしくなかったなあ、と」

陸奥「ど、どういうことよ…?」

青葉「いやだって、気になるじゃありませんか。この子の目的って何だったのかー、とか、どうして不知火ちゃんを相手に選んだのかー、とか。そもそも、“切り裂きジャック”という世紀の大事件の生き証人を目の前にして、取材もせずに撃ち殺そうだなんて…いやまったく、どうかしてたとしか思えません」

陸奥「“取材”って…そんなこと言ってられる状況だと思ってるの!?」

青葉「そう、そんな状況じゃないんです。だから--停戦交渉をしましょう。お互いに手出しをせず、安全に取材ができるように。ね、聞いてるんでしょ?“マスター”さん?」

(一種獰猛ともとれる表情で、青葉はニヤリと笑った)


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