「…マスター」

『アサシン『ジャック・ザ・リッパー』に命ずる。『此度の戦いを除く、反撃以外の攻撃を鎮守府関係者にすることを禁ずる』

(令呪を一画使用し、アサシンはもう反撃以外で鎮守府関係者を攻撃することができなくなった)

「さて、こちらはそちらの条件を満たした。次はそちらの番だ…もしも約定を違えたら、わかっているだろうな?」

青葉「ええ、わかっています」

「明後日までに準備をしておけ。ではな」

(そう言い残すと武人はその場から霊体化して立ち去った。だがアサシンはその場に残り、青葉たちが怪訝な顔をしていると、青葉に一つの問いを投げかけてきた)

ねえ、おねえちゃんはなんで戦ってるの?しれいさんなんてみすててにげればよかったのに

しんかいせいかんとの戦いだっていつ殺されるかわからない。こんかいだってそう、私たちがちょっとほんきを出せばおねえちゃんのくびはなくなってたよ?

わたしたちはしりたいの。おねえちゃんの戦うりゆうをおしえてほしいな


青葉「まさかこっちがインタビューされる側になるとは思ってませんでしたねえ…

戦う理由、ですか。一言で答えるなら、“戦わない理由がないから”ですかね。

誰かを見捨てて逃げて、それで生き残ったって…戦いで沈むよりずっと辛いじゃないですか。青葉は、そういう思いを沢山してきましたから…はは、そのせいで恨まれたりもしてますし、ね。

まあ、私たち皆がそうだとは言いませんよ。みんなそれぞれ、違った理由を持って戦ってるんです。

不知火さんなんて、全然違うこと言うんじゃないかなあ。たぶん、その辺は直接闘った貴女のほうがよくお分かりなんじゃないですかね?」


さあ、こころの中のことなんてだれにもわからない

おねえちゃんの理由も、わたしたちにはよくわからないよ

どんなほうほうを使ってでも、みかたを盾にしてでもさいごまでいきのこったほうがかちだとおもうよ?まあ、うまれてないわたしたちがいうのもへんだけどね

じゃあね、おねえちゃん こんどは向こうでまってるよ?


(そう言い残して数時間にわたって艦娘を圧倒し続け、艦隊を壊滅寸前にまで追い込んだ霧の暗殺者もまた武人と同じように北方海域から立ち去った)


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(鎮守府史上未曾有の難敵を見送り、振り向いた青葉の顔面は…蒼白だった)

青葉「…あ…危なかった……!」

雪風「危なかったって…何がです?」

衣笠「もしかして、『此度の戦いを除く』…ってとこ?」

青葉「ぎくぅっ!」

陸奥「そっか。もしアナタの言った言葉のままだったら、“さっきまでの戦いの反撃”でやられてたかもしれないものね…たしかに危なかったかも」

阿賀野「あ、でもわざわざその分を付け足してくれたってことはー、結構話のわかる人なんじゃないですか?」

伊勢「流石にそれは楽天的すぎない?」

衣笠「…青葉、ほんとにいいの?」

青葉「何度も言わせないでください。そりゃあちょっとは怖いけど…」

雪風「でも、きっと…ううん、絶対大丈夫!」

青葉「ま、そういうこと!あ、そうだ。雪風さん、不知火さんの戦い、見てたんですよね?もう覚えてないかもしれないけど、よかったら少し話してくれません?聞かずに出て行くのも勿体ないんで」

雪風「えっ!?あ、その…ほんとに、もう殆ど覚えてないんですけど…でも、何でしょう…とても、楽しそうでした。まるで、戦ってるんじゃなくて、遊んでる、みたいな…ごめんなさい、上手く言えないですけど」

青葉「そうですか、ありがとうございます。ふーむ、不知火さんの戦う理由…一度、本格的にインタビューしてみたいですね。さてと」

衣笠「青葉?」

青葉「こうしちゃいられません。2日間って結構シビアな〆切もらっちゃいましたからね。ちゃんと約束どおりの偽装工作と、出発の準備を済ませないと!」

陸奥「そんな、アナタ1人で頑張ることないのに」

青葉「こーゆーのは、身軽なほうがやりやすいんですよ。じゃ、一足先に戻ります。司令官のこと、頼みましたよ。お先に失礼!」


(斯くして、鎮守府を襲った前代未聞の脅威は退けられた。被害、中破・大破、多数。重傷1名。死者および喪失艦艇…無し)


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