不知火「さて…と」
(清々しい面持ちで“敵”を見送り、不知火は仲間たちへ振り返る)
不知火「みんな…」
利根「うむ、見事であったの!」摩耶「あの強敵相手にあそこまでやるとはな。見違えたぜ!」飛鷹「ま、私たちのサポートあってこその勝利だけどね!」霧島「戦艦としては、トドメを取られちゃったのが悔しくはあるわね」瑞鶴「みんなはいいわよ!私なんて、寝てる間に終わっちゃったんだから!」日向「あとでたっぷり話してやるさ」隼鷹「モチロン、祝杯をあげながら、ね!」不知火「……」ポカーン
鬼怒「ん?どったの?」不知火「いえ……その……責めないん、ですか?」
(不知火の疑問は当然である。何しろ仇敵たる深海棲艦に止めを刺さなかったばかりか、燃料まで分け与えたのである。艦隊全員が処分を受けてもおかしくないほどの重罪にも拘わらず、誰も不知火を責めようともしないのは不思議を通り越して奇妙ですらあった)
鬼怒「それは…」赤城「それは、私たちの仕事ではありません」(本隊旗艦の赤城が言葉を引き継ぐ)
赤城「責任を感じているのなら、それは提督に伝えるべきね」ニコッ鬼怒「そうそう!もちろん、みんなの頑張りも、たっぷり聞かせてあげなくちゃ!」不知火「赤城さん、鬼怒さん…」
隼鷹「そうだぜ~、祝勝会じゃ提督にもたっぷり飲ませてやんないとねぇ~」Верный「やれやれ、話を聞いてたのかい?」(艦隊が笑いに包まれる。ここに来て、不知火はようやく勝利の喜びを皆と分かち合えたことを実感していた。そして、そんな不知火に右手を差し伸べる者があった)
早霜「さあ、行きましょう。司令官も…待っているわ」(不知火の左手が、力強く握り返す)
不知火「――――ええ!」
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(満天の星空。小波さえも星明かりを映して瞬いているようであった)
(星の瞬きと波の煌めき。その境界に、それらとは異なる眩い光が現れる)
(暁の水平線にも似た輝きの中から、真っ先に現れたのは手を取り合う二人の影)――――司令。ただいま、です――――
おわり