(護衛艦隊の後方、機動部隊本隊旗艦の赤城は、水面を切って迫り来る爆弾の群れを前に、矢を番えながらひとりごちた)
赤城「反跳爆撃の長所は、命中率の高さと、高度を落とし切った後の迎撃されにくさ…でもそれは、多くの艦船において真横への迎撃手段が貧弱だったから」(言いながら、弓を引き、放つ。艦載機に変化しない、“ただの矢”を)
カッ――――(矢を受けた爆弾は赤城の体に達することなく空中で爆散した)
瑞鶴「想定外ではあったけど、対処できないわけじゃないわ!」(赤城と瑞鶴の矢は、自分たちに当たる軌道にある爆弾を優先的に起爆し、排除していく。さらに、投下し終えて高度を上げようとする艦爆をも、逃さず射抜いていく。但し撃ち漏らしがないわけでなく――――)
瑞鶴「づぅっ!」赤城「瑞鶴さん!」瑞鶴「大丈夫、掠り傷なんだから…それより!」(射撃の手が緩んだ隙に、2個の爆弾が有効な迎撃手段を持たない飛鷹と隼鷹に迫る)
霧島「日向!」日向「応!」キィ…ン――――(飛鷹の背後から駆け出した日向は、居合い一閃、飛鷹に迫る爆弾を両断した。半分になった爆弾が飛鷹の眼前で爆発するが…)
日向「後部甲板は盾ではないのだが…まあ、このくらいなら問題あるまい」飛鷹「助かったわ…」(日向がすれ違いざまに投げ渡した後部甲板によって、飛鷹への爆風は防がれた。一方…)
霧島「――おおおおおおおおおおっ!」ガッ!隼鷹「おわっ!?」(屈み込む体勢になっていた隼鷹の背中を踏み台に、霧島は跳躍した。そして、隼鷹の真上を飛び抜けようとする敵機を“素手で掴み取った”)
霧島「おらぁ!」ドゴーン!!(そのままハンドボールのシュートを放つが如く、敵機を自身が放った爆弾に向けて投げ返し、爆発させた)
隼鷹「ヒャッハァー!ド派手だねぇ!」霧島「ふっ、ざっとこんなものね」日向「奴が帝国海軍の常識を上回ってくるというなら――」霧島「私たちは軍艦そのものの常識を上回るだけのこと」赤城「それこそが、私たちが“艦娘”としてここに在ることの意義です」~~~~~~~~~~
不知火「本隊、被害状況を!」
赤城「瑞鶴小破!」隼鷹「あと霧島が指噛まれた!」摩耶「唾でも付けとけ!」鬼怒「ふぅ、一時はどうなることかと思ったけど…」利根「うむ、これで制空権も確保できた。ここまでは上々じゃ」不知火「敵の損害は?」
隼鷹「あ~、天山も流星も攻撃しちゃいるんだがビクともしてないよ。敵生還機は二十機ってとこだね」 (触接していた彩雲からの報告を隼鷹が告げる)
不知火「了解。第二次攻撃が来る前に接近して砲撃戦を挑みます。陣形変更、第四警戒航行序列!」
(砲撃戦で有効打を与えるべく、防御的な第二警戒航行序列から攻撃的な第四警戒航行序列への移行を指示する。が、そこへ悲鳴のような絶叫が上がる)
Верный「Нет!第一だ!ソナーに…何かいる!!」不知火「!?」
(この戦いで三式水中探信儀を装備しているのはВерныйだけだ。カ級やヨ級なら不知火の九三式聴音機にも反応があるはず…その意味に気が付き、今度こそ不知火は青ざめる)
不知火「対潜警戒!!“甲標的”がいる!!」
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