レ級「んっん~…やっぱ甘かったかぁ…アイツみたいにゃ行かないねぇ」

第一次攻撃はほぼ失敗…戦果らしい戦果と言えば空母瑞鶴を小破させたことぐらい…だが

レ級「だけど良いのかな?航空戦が終わった程度で気を抜いてさぁ…あんま隙だらけだと…喰らっちまうぞ?」

レ級はチラリと己の艤装を一瞥する…尻尾の様な異様な形の艤装…そのちょうど顎にあたる部分から突き出していた物が喪失している…被弾箇所?否、違う

レ級「油断もない…慢心など以ての外…けれどそれでも、防ぎきれないものってのもあるもんさ」

そこに在ったモノ…それは海の暗殺者…水面下から近付き敵に牙を剥く小型の潜水艦とも言うべき代物…戦艦レ級が規格外と呼ばれる所以――!

レ級「…陣形を変える瞬間…その致命的な隙…このボクが―――戦艦レ級が見逃すと思ったのかな?………ちっ、耳が良いのがいるな…だけどもう遅い」

既に航空戦の間に艦隊の懐に文字通り潜り込んだ甲標的が重巡洋艦『摩耶』に狙いを定め…その牙を露にする――!

レ級「散々に惨々に燦々にボクの航空隊を掻き回してくれたからねぇ…ボクは恩義は一千倍に…屈辱は一万倍にして返す主義なのさ♪悪く思いな?ぎゃはは!」


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Верный「くっ…!どこだ…どこにいる…!」

(ソナーに全神経を集中し、敵の位置を捉えようとする。パッシブソナーしか持たない不知火・早霜・鬼怒も同様に必死に敵の気配を掴もうとするが、極小の船体しか持たない特殊潜航艇を見つけるには至らない)

利根「くぅっ…」

飛鷹「カ号でも連れてきてれば、私も力になれたのに…」

(ソナーを持たない8隻は無力さに歯噛みする。姿の見えぬ敵に対し、12隻が12隻とも、同じ思いを胸に抱いていた)

『撃つならば、自分を撃て』
『自分が犠牲になれば、他の11隻が必ずや敵を打倒してくれる』
『否、犠牲になどなるものか』
『魚雷ごとき耐え抜いて、吠え面かかせてくれる――』

Верный「いた―――利根の真下!!」

利根「んなっ!?」

ドッッ!!

(爆雷を持たない航巡の真下…潜水艇が隠れるのにこれ以上の場所もない。利根が驚愕の声を上げるのと同時に、巨大な水柱が摩耶の全身を包んだ)

摩耶「ぐああっ!?」

鬼怒「摩耶!」

早霜「摩耶さん!」

不知火「くっ!」

――シュバッ!

(水柱が崩れ落ちる瞬間、利根の足もとに黒い影が出現するのを不知火は見逃さなかった。影に向かって、右手に携えた『ナイフ』を投擲する。ナイフが掠めた影はすぐに姿を消したが、燃料か血液か…どす黒い何かが敵母艦に向かって航跡を残していた)

摩耶「へへっ、やるじゃねぇか…これで再接近されてもすぐに気づける…つっ!!」

不知火「摩耶さん!喋っては…」

摩耶「アタシのことは心配すんな…ちょっと傾いちまっただけだ」

利根「何を言っておる!その傾斜では、斉射でもすれば転覆ではないか!」

(利根の指摘通り、魚雷を受けた摩耶の右足はほとんど浮力を失い、片足で立っているような状態であった。損害の程度は『大破』、戦闘続行すら危ぶまれるような状態だが…)

不知火「摩耶大破!このまま進撃します!」

鬼怒「護衛退避させないの!?」

不知火「摩耶さんのために駆逐艦をもう1隻失うわけにはいきません。それに、敵機が残っている以上、護衛退避のほうが危険と判断します」

摩耶「そうだ、それでいい…なあに、機銃くらいはまだ使える。あのクソガキ…見てろよなっ!」

(再び第四警戒航行序列に陣形を整えなおし、進軍を再開する。大破艦を含むため進軍速度は遅いが、確実に両軍の距離は詰まっていく。超長射程の46㎝三連装砲が水平線の向こうにいる敵艦を射程にとらえるまで、あと数秒――――)


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