アタ(散開した?……なるほど、バラバラになって私の追撃をかわそうとしているのか)
アタ(だとしたら愚かな真似をしたものだ。固まっていればまだ何人か突破できたやも知れんのに)
舞風「ハァハァ……」
黒潮(こっちに来るなんて…いや、もしかしたらこっちこそが本拠地に近いのかもしれへん)
黒潮「不知火!敵が――――――あうっ!?」
黒潮が持っていた通信機に矢が突き刺さる。まるで連絡などさせないというように。
黒潮「舞風!通信機使える?」
舞風「こっちも駄目!」
黒潮「そうか……くそ、何処にいるんや!」
彼女たちは矢をかわしながら必死で駆け抜ける。時折牽制として矢が飛んでくる方向に主砲や機関銃を撃ち込んでみるも手ごたえがなく、見えない敵との戦いで二人は心身ともに疲弊し始めていた。
アタ(そろそろ仕留めるか)
獲物を誘導し、追い込むことなど狩人たるアーチャーには造作もない。逃げる二人を矢で巧みに誘導し、本拠地たる工房から引き離していた。
黒潮(あかん、このままじゃうちら二人とも倒されるし、何よりこのままじゃ逃げ切っても迷子になってまう!)
舞風「あぐっ!」
黒潮「どないした!?」
舞風「足が、足が…」
舞風の両足に二本、タービンに一本矢が突き刺さり、もはや立ち上がるのも困難な状態である。これを見た黒潮はある確信を抱く。
黒潮「うちらを此処で仕留める気か……!」
瞬間、黒潮の両足とタービンを矢が貫いた。
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朝潮「こっちには来てないみたい…撒けたのかしら?」
荒潮「わかんないけど油断は駄目よ?」
満潮「分かってるわよ」
???「ねえ、こんな夜にどこに行くの?」
朝潮「そんなの、決まって―――え?」
大潮「貴方、誰ですか?」
ア「わたしたち?わたしたちは―――おねえちゃん達の敵だよ?」
言うが早いか数本のナイフが彼女らの足元に突き刺さる。
朝潮「くっ…みんな、構えなさい!」
荒潮「撃っては駄目よ!青葉さんの警告が正しいのなら―――」
ア「なあんだ。おねえちゃんたちって、ただの腰抜けなんだね」
ア「ねえ、その武器ってかざりなの?」
さらに放たれたナイフが荒潮の頭のすぐ横を通り、背後の木に突き刺さる。
ア「なんだ、やっぱり飾りなんだね。おねえちゃんたちのことって、こう言うんだよね」
ア「“臆病者”って」
大潮「この……!」
さらにナイフを投擲しようと振りかぶる。すると―――
ズドンッ!
挑発に耐えかねた満潮がついに発砲してしまった。そう、ついに
攻撃してしまったのだ。
ア「あはっ!ありがとう、おねえちゃんたち!」
アサシンは先の戦いにより令呪で艦娘への攻撃を禁じられていた。だからこそナイフの投擲と挑発で煽っていたのである。しかし、彼女が発砲してしまったことにより令呪の効果が切れてしまった。
彼の連続殺人鬼が、令呪の軛から解き放たれたのである。
ア「それっ!」
満潮「ッ!」
荒潮「させるもんですか!」
満潮に一息で接近し肺腑を貫こうとしたが、荒潮がうまくカバーし難を逃れる。さらに残った二人が追撃を掛けるも、アサシンはこれを悠々とかわす。
朝潮(強い!なんとかしないと、最悪何もできずに倒される!)
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