蝉『――――――だそうだぞ?』
紅茶「そうか。それがどうかしたのか?」

そうアーチャーは嘯く。その言葉に内心の笑いをこらえつつ女帝は答える。

蝉『あれほどまであちらが気勢を上げているのだ、それに答えてやるのも一興だとは思わぬか?』
紅茶「フン、唐突だな。君は彼女らのことなど虫けら程度にも考えてはいまい、それがいきなりこれだ。裏があると考えない方がどうかしている」
蝉『いや何、奴らの奮闘に心が打たれたというやつさ。全力を尽くした者には敵であれ味方であれ、相応の対応をするべきだろう?』
紅茶「心にもないことを。そもそのような考え方は君から最も遠いものではないのか?アッシリアの女帝殿」
蝉『お主こそよく口が回るものよ。で、どうするのだ?』
紅茶「ふん。たとえ彼女らの防空能力が高くとも、無限の剣にはかなうまい」
蝉『ほう?お主、あれは必殺を誓った時にこそ使う物ではなかったのか?』
紅茶「何。―――私も熱くなることがあるということだ」

由良「対空戦闘、開始!」

三十人近い艦娘が一斉に対空戦闘を開始し、空に厚い弾幕を張る。これにより、アーチャーの爆撃をある程度軽減することができていた。そのためこのまま続ければ十分渡り合えると自信を深めていたのだ。

菊月「来るぞ!撃ち落とせ!」
長月「な、デカ―――――」

二本の巨大な剣が艦娘部隊の前方と後方を塞ぐように突き刺さる。アーチャーが撃ったものはイガリマ。またの名を斬山剣といい、山をも切り裂く巨大な剣である。

飛龍「こっちの部隊ももうすぐ向こうに到着するわ―――え、アーチャーがいない?」
大鳳「こっちも確認できない!どこに行ったの!?」

そんな時、イガリマの向こうから聞き覚えのない男性の声が聞こえる。その男は朗々と言葉を発していた。


―――体は剣で出来ている(I am the bone of my sword)

血潮は鉄で、心は硝子(Steel is my body, and fire is my blood. )

幾たびの戦場を超えて不敗(I have created over a thousand blades. )

ただの一度も敗走は無く(Unknown to Death. )

ただの一度も理解されない(Nor known to Life. )

彼の者は常に独り剣の丘で勝利に酔う(Have withstood pain to create many weapons.)

故に、その生涯に意味は無く(Yet, those hands will never hold anything. )

その体は、きっと剣で出来ていた(So as I pray, UNLIMITED BLADE WORKS. )


瞬間。世界が切り替わった。





光に包まれて思わず目を閉じ、再び目を開いた時彼女たちは驚愕した。一面に広がる荒野には無限とも言える数の剣が突き刺さり、燃える大空には巨大な歯車が回っている。

長良「ど―――何処よ、此処……!」
武蔵「クソ、通信機が通じん!どうやらここはさっきの場所とは全く別の場所のようだ」
蒼龍「あれは――――――アーチャー!」

蒼龍の声で一際高い丘に視線を向ける。その丘の上には、赤い外套を纏った男が立っていた。

武蔵「アーチャー!我らを此処に連れてきたのはお前か!」

紅茶「そうだ!」

アーチャーが腕を掲げ、それに従うように周囲の剣が宙に浮かび切っ先を艦娘に向ける。

紅茶「ご覧の通り、貴様達が挑むのが無限の剣。剣戟の極地!恐れずしてかかってこい!」

五十鈴「構えなさい!」

勢いよくアーチャーの腕が振り下ろされ、無限の剣が襲いかかった。


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