不知火「黒潮!舞風!応答を――ダメか…」

5手に分かれた駆逐隊のうち、朝潮率いる第8駆逐隊はアサシンと、黒潮・舞風の2人組はアーチャー=アタランテと遭遇、動きを止められていた。不知火率いる第18駆逐隊は森を南東方向に駆けながら、この状況から敵の狙いを見抜こうとしていた。

不知火「島風ではなくこの2隊が狙われた、ということは…」
陽炎「少なくともどちらかは敵の本拠地に近づいていた?」
霞「普通に考えりゃそうね。それならもう片方はブラフ、もしくは単に戦力を削ぐ目的ってことだわ」
霰「なら、どっちが……」
陽炎「黒潮たちはほぼ真東に向かってて、今は通信機が壊されて位置がわからない。朝潮たちは南西方面」
霰「東か、南西」

ここで4人は走りながら顔を見合わせる。

霞「それなら、決まったようなもんじゃない?」
霰「うん」
不知火「そうですね」
陽炎「なら、『せーの』で言ってみる?…せーのっ」
「「「「東」」」」

ふっ…と4人は微笑を浮かべる。

霰「アサシンは…“あの時”北方で戦った『切り裂きジャック(仮)』…」
陽炎「『手を出すな』っていうのは、こっちが攻撃するまで向こうは手が出せない、ってことだったみたいね」
霞「なら、そんな不確実な方は本命には置かない」
不知火「加えてアタランテが真っ先に通信機を壊したことも傍証になります。おそらくは位置の手掛かりを少しでも減らすためでしょう」

ならば、と不知火が次の指示を出そうとした瞬間、陽炎が血相を変える。

陽炎「ちょっ!ま、待ちなさい島風!!」
島風『待たないよ!!私が一番乗りなんだから!!』

GPSの画面を見ると、島風が真東を目指して一直線に駆けていくのが確認できた。単独で敵本拠地を目指せば、島風は今度こそ狙われる。そしてアタランテが通信機を狙う戦術をとっている以上、突出は自殺行為だ。不知火は瞬時に頭脳を回転させ、選択肢を決定する。

不知火「16駆!島風を追って!!」
天津風『分かったわ!』
霞「私たちも――」
不知火「いえ、私たちは追いません」
霰「じゃあ……」
不知火「東へ転進。島風たちは放置して敵本拠地を目指します」


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