赤城「不知火さんたちが、青葉さんの位置の手掛かりをつかんだようです。私たちも」
加賀「この先森に入ってしまえば発着艦はできなくなります。ここから偵察機を飛ばしましょう」
赤城ら空母娘を中心とした第2部隊は深山町の外れに位置する穂群原学園のグラウンドにいた。正規空母4隻、軽空母6隻、駆逐艦3隻。損害は軽微ではないが、この数がここまでたどり着けたことは僥倖といえた。うち4隻の空母娘…赤城、加賀、祥鳳、瑞鳳が弓を構える。
赤城「偵察隊、発艦!」
矢は100機ほどの艦載機に姿を変え、一部は森の上空に、一部は森の中に消えていく。
千歳「私たちはいいのね?」
赤城「ええ。貴女たちは艦載機の残りが少ないですから、ここの守りに専念してください」
吹雪「第11駆逐隊、警戒を続けて!」
白雪「了解」
深雪「了解!」
空母たちの3方に、駆逐隊が睨みを利かせる。
赤城「もはや敵本拠地に突入できるのは不知火さんたちだけ…だからこそ、私たちが一刻も早く『工房』を発見しなければ」
加賀「……」
大和隊が動ければ、とは言い出せず、加賀は唇を噛んで押し黙った。
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その大和隊は…
矢矧「ここが柳洞寺ね。大和、大丈夫?」
大和「ええ。もう動けるわ」
矢矧の肩を借りていた大和が立ち上がり、周囲を見渡す。
足柄「うう…」
初春「無念じゃ…」
ここまで苦労して辿り着いた拠点候補であるが、既に部隊の人数は大きく減り、残った者たちの損傷も大きい。そして何より…
大和(あきつ丸隊、高雄隊が全滅、陸奥が行動不能…か)
寺のある円蔵山の周辺には強力なサーヴァントが3騎。『黒のバーサーカー』は長門が1人で支えているが、『大剣のセイバー』ジークフリートと『巨人のバーサーカー』は遂に支えきれず、相対する艦娘たちからの応答も途絶えた。
大和(ここまで…か)
大和は残った者たちによる捜索続行を断念した。幸い空母隊と駆逐隊が捜索を続けている。ならば、彼女らが少しでも長く捜索を続けられるように、自分たちにできる役目を果たすべきだ。
大和「皆さん、これからの行動を指示します。大破した者はここで待機。敵も戦闘できないものを優先して襲ったりはしないでしょう。それ以外の者で態勢を立て直し、敵サーヴァントの足止めに徹します」
ごくり…と息をのむ反応が伝わってくる。大丈夫、怯えている者はいない。まだ戦える。
大和「まずはこの寺の近くにいる2騎…ジークフリートと『巨人』を叩きます。ここが正念場です。気を引き締めて行きましょう」
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一方、その柳洞寺の参道…
バキィン!
長門「くっ!」
陸奥の砲塔をへし折って宝具化した『槌』を受け止めきれず、日向から長門が借り受けた日本刀が砕け散った。砲撃の反動を利用して攻撃を躱すと、長門は石段の下方へと飛び、距離を取った。
湖「■■■■■■ーーーーーーッ!」
長門「!」
バガァン!!
大上段に『槌』を振りかぶった狂戦士は長門を追って跳躍し、真っ直ぐに振り下ろした槌が一瞬前まで長門の立っていた石段を粉砕する。長門はこの一撃も掻い潜り、敵の背後に回っていた。砲撃を返そうとするも、これは返す刀の横薙ぎを躱すために断念せざるを得なかった。
長門(何かが変わった…?)
陸奥が自爆して倒れて以降、長門は敵の攻撃が変化したことを感じていた。先ほどまでは長門や陸奥を『支配』するために手を伸ばし、或いは飛び乗ろうとする動作が見られたが、これが見られない。単純に手に取った武器で長門を粉砕することのみを狙っているように見えた。
長門(私を『支配』して、自爆でもさせた方が簡単なはずだが…成程、これがバーサーカーたる所以か)
バーサーカーはその性質上、思考能力が大幅に低下している。目の前の『黒のバーサーカー』=ランスロットはスキル『無窮の武錬』によりその戦闘における巧みさは維持していたが、戦術的・戦略的な思考までは出来ないようであった。
長門(つまり、こいつは私を叩き壊すことのみを考えている、ということか――ならば)
ダッ!
長門「追って来い、狂戦士!」
湖「■■■■■■ーーーッ!」
長門は敢えて石段から外れ森の中へ飛び込んでいく。バーサーカーもそれを追って円蔵山の山林に飛び込む。
長門(それでいい、少しでもこいつを味方から引き離す!)
果たしてどこまで引き離せるか、と自問しながら、長門は駆けた。
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