モ「マスター」
『どうした』
モ「奴らの首はオレが獲る。―――文句はねぇな?」
『構わない。だが、今はまだ駄目だ。約定を破ることは許さない』
モ「分かってるよ。その後の話だ」
『ならば好きにするといい。こちらから言うことは何もない』

北上「さーて、後は何とかここを維持するだけかねぇ」
木曾「姉貴、別の奴が来るかもしれないからあまり気は抜くなよ?」
北上「はーい、分かってるって」
利根「大丈夫だとは思うが、本当に分かっているんじゃろうな?さっきみたいな奴が――――――避けろ木曾!」
木曾「な―――――――」

ゴドォン!

利根の警告の直後、砲弾じみたものが木曾の体を直撃し土手まで弾き飛ばした。
衝撃で巻き上がる土煙から現れるのはついさきほど海に流したはずの一人の騎士。

木曾「な……が………」

モ「よぉ、艦娘共。あの程度でオレを無力化できたと思っているのか?」
モ「―――だとしたらオレも舐められたものだ」

再び現れる氷の大地。尤もそれは今までの物とは違い、まるで―――古代ローマの闘技場(コロッセオ)のような形をしていた。

鈴谷(逃げ場は―――無い!あの氷と同じなら砲撃じゃ破壊できない!)

モ「お前たちの首はオレが獲る。まずはお前だ!」

スキル『魔力放出』により砲弾の如き加速を得たその騎士は、一番近くにいた熊野に斬りかかった。

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長門は北に向かって逃げ、それを狂った騎士が追う。彼女はこの難敵を味方から引き離し、尚且つ自分に有利な場所を確保するため北に向かって走り続けていた。

長門「く……足が速い!このままでは追い付かれる!」

湖「■■■■■■ーーーーーーッ!」

長門(応戦は論外、かといって走り続けるだけでは確実に追いつかれる……何かいい策は無いのか!)

湖「■■■■■■ーーーーーーッ!」

長門(クソ――――――なっ!?)

バーサーカーは長門を確実に叩きのめすべく『槌』を投擲。これを回避しようとした長門は体勢を崩してしまい転倒し、その隙に一気に距離を詰めたバーサーカーの拳が振るわれる。

ズドン!

長門「く―――うぉっ!?」

長門の顔面めがけて振るわれる拳を間一髪でかわし、逸れた拳は地面にめり込んだ。
さらに振らわれるべく振り上げたこぶしを、長門の手が抑える。

長門「ぐ、ぬぅ……!」

両者の力比べが始まる。尤も、いかな戦艦長門とはいえ狂戦士の膂力にはかなわない。
ここで力負けしたら殺される、死にたくない。その思いがいわゆる火事場の馬鹿力を生み出したのだろう。
組み合っているうちに長門は兜のスリット、その奥に隠されていた目を見てしまった。その眼を―――狂気にゆがみ、憎悪に曇りきった目を見てしまい、不覚にも怯えてしまった。そのせいで一瞬力が抜け――――――拳が振り下ろされた。


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