固有結界『無限の剣製』。その中で一人の艦娘が、“正義の味方”と死闘を繰り広げていた。
マストを利用した槍と黒白の夫婦剣が火花を散らし、裂帛の気合いが燃える空を切り裂く。
叢雲「やぁぁぁぁぁぁぁぁあああああっ!」
気合と共に繰り出される槍は容易に防がれ、
紅茶「ハァッ!」
お返しとばかりに蹴りが叩き込まれる。思わず崩れ落ちそうになるが、震える膝に鞭を撃って立ち上がる。あんな奴に負けてたまるか、私は認められない。その思いだけで叢雲は戦い続ける。
叢雲(何で?何で私の攻撃が当たらないの、どう見ても大きな隙があったのに……!)
紅茶「どうした、この程度か?そも、先ほどお前は私を断じたが、どうやってそれを実行するつもりだ?」
紅茶「手段無き理想は妄想と変わらん。お前のそれは、妄想とどう違う?」
叢雲「そんな―――ことは―――」
紅茶「答えられないだろう。どれほど頑張っても、指の間から零れ落ちる物はある」
紅茶「―――ある場所に窃盗集団がいた。生活苦で窃盗をしなければ生きていけずやむに已まれぬものであったが、多くの被害者がいるだろう。――――お前なら、どうする?」
叢雲「決まってるじゃない!とっ捕まえて盗られたものを取り返すのよ!」
紅茶「なるほどたしかにそれで被害者は救われるだろう。だが加害者は救われない」
叢雲「あ―――」
紅茶「
全てを救うとはこういうことだ。これを知ってもなお、お前は全てを救うとでも言うのか」
紅茶「それでもなお私に挑むというのならば来るがいい。尤も、その折れかけた足と心で戦えるのならば、な」
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