冬木市西部。円蔵山の北側では長門が、南側では大和を中心とする水上艦隊がそれぞれ
狂戦士の英霊を、足止めのために相手取っていた。
湖「■■■■■■■■■■■ーーー!」
ガッ!!!
振り下ろされた拳は長門の顔面を粉砕…しなかった。間一髪の判断が間に合ったのか…無意識の行動か…或いは斃れた陸奥の姉妹を思う念が届いたか…拳は長門が拾い上げた陸奥の砲塔に突き刺さり、辛うじて止まっていた。
長門「むんっ!!」
動きの一瞬止まった甲冑を巴投げの要領で放り投げると長門は立ち上がり、再び怪物に正対した。
長門「私としたことが…憎悪に塗れた眼など、見慣れているだろうに」
言いながら呼吸を整え、体の各部を確かめる。両腕、両脚、よし。艤装…だいぶ傷んでいる。健在なのは第3砲塔のみか。だが、この狂犬の相手をするにはそれで
十分だ。
長門「私は沈まんよ。この世の全てを灰にする光に、私は一度耐え、二度目も限界まで抗った。恨みに任せて振るわれるだけの力で、私を倒せると思わないことだ、狂戦士」
湖「ur……」
呻き声とともに、バーサーカーは砲塔から拳を引っこ抜く。再び宝具化されていく砲塔の残骸を左手にぶら下げながら、甲冑の奥の眼が長門をまたも睨み付けた。
長門「そうか、その『怒り』がお前の
狂気の源というわけか」
湖「…Ar……」
長門「思えば、お前も生前は誇り高き騎士であったのだろう。それを斯くも狂わせる『怒り』とは何であったのか…」
湖「…urrr……!」
長門「来い、狂戦士!お前の『怒り』、この長門が
鎮めてやろう!!」
湖「Arrrrrrr!!」
騎士の咆哮を合図に、2つの黒い影がぶつかり合った。
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「■■■■■■■■■■■ーーー!」
もう一体のバーサーカー、黒き巨人ヘラクレスの斧剣は、今まさに大和の頭上に振り下ろされようとしていた。が。
ドドドドドッ!!
「!?」
突如巨人の足元の地面が崩れ、巨人は体勢を立て直すために攻撃を中断した。大和の把握する限り、艦娘たちは弾を打ち尽くし、このような攻撃をできたものはいないはずである。
大和「いったい誰が……」
ブロロロロロ…
大和「このプロペラ音は…瑞雲!?」
見ると、巨人は艦娘たちを無視し、宙を舞う何かを目掛けてその斧剣を振り回していた。その視線の先には、闇に紛れて飛び回るフロート付きの機体――扶桑と山城、最上、三隈が放った32機の瑞雲の姿があった。
「■■■■■■■■■■ーー!」
瑞雲たちは決して巨人の射程内に近づくことをせず、さりとて無視されないように最大限に存在をアピールして巨人を引き付けていた。
初春『大和隊、聞こえるか!応答するのじゃ!』
通信機から聞こえてきた初春の証言は、先ほどまで大和たちが経験したものを裏付けていた。
大和「攻撃が効かない――」
初春『そうじゃ、何かの魔術的な防御かもしれん。兎に角、相手をするだけ無駄じゃ』
Aランク未満の攻撃を無条件で無効化するヘラクレスの宝具『十二の試練』。その名を大和たちは知るべくもなかったが、それだけの情報があればこの後の行動を決めるのに十分であった。幸い、今は扶桑らの残した瑞雲が巨人の注意を奪っている。離脱するには今しかない。
大和「撤退よ!標的をジークフリートに変更、方角は南西です!」
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