天津風「島風!!」
冬木市南部の山林の中。『最速の狩人』アタランテに独り挑み、通信機と足を破壊されて放置された島風に第16駆逐隊の面々が駆け寄った。
島風「あま…つかぜ…?」
天津風「喋んないで!」
応急処置を開始する天津風に、島風は涙声で謝罪した。
島風「ごめん…アイツ、止められなかった…」
天津風「いいから黙って!とにかく止血を…」
島風「これ…使って……」
と、島風が何かを差し出す。
天津風「これって…!」
島風「私のタービン……天津風なら…使えるから…!」
天津風「ちょっと!しっかりしてよ!」
島風「ごめんね…先に…寝てるよ…」
天津風「……!」
島風の『改良型艦本式タービン』を受け取った天津風は、その場にすっくと立ちあがる。
天津風「まったく…寝るのまで速いんだから……」
初風「天津風?」
天津風「初風、時津風。島風をお願い。できれば黒潮たちを回収して、離脱して」
初風「…それで?アンタたちはどうするってわけ?」
天津風「雪風と私で
アイツを追いかける。まだ陽炎たちに追いつかせるわけにはいかないわ」
初風「はあ…言い出したら聞かないのは島風と同じね」
呆れた声を出す初風の隣で、連装砲ちゃん…島風の連装砲の、最後の生き残りが声を上げた。
連装砲ちゃん「きゅーーーっ!」
天津風「そう…そうね。アンタも一緒に来てくれる?」
連装砲ちゃん「きゅっ!」
連装砲くん「きゅっ!きゅっ!」
時津風「天津風…気をつけてね」
時津風の手によって、タービンの換装が完了する。頭頂の煙突から勢いよく白煙を噴出させながら、天津風は宣言した。
天津風「それじゃ、雪風、いくわよ!」
雪風「はい!」
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その頃、その標的たるアタランテは…
アタ「むっ…こっちにもか!」
ガガガガッ!!
森の中に展開する数十機の烈風改に手を焼いていた。
アタ(どちらへ走っても待ち構えている…撃ち落とそうにも器用に回避する上に、別の機体が妨害してくる…このさい無視しても良いのだが…)
ガガガガッ!!
アタ「鬱陶しい!ならばこれでは…どうだ!」
アタランテは先ほどまでと同様矢を番えると、それを頭上に向けて放った。
ザザザザザッ!!
一瞬遅れて、森の中に『矢の雨』が降り注ぐ。広範囲を攻撃し、一網打尽にしようという思惑だったが…
アタ(墜ちたのは数機か、まったく手こずらせる…)
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加賀「くっ……ぐ……!」
その烈風改を操っているのは、穂群原学園のグラウンドに陣取る空母部隊の1人、加賀であった。加賀は、不知火らの後を追った赤城らの航空部隊とは別に、自らの機体を指揮して島風を倒したアタランテを追跡させていたのだった。
加賀「く……また3機落とされた…!」
だが、さしもの練度を誇る一航戦といえども、暗く障害物の多い森の中で、『最速の狩人』たるアタランテの矢を避けながら追跡を続けるのは困難を極めた。目を閉じて集中し、時折呻き声を漏らす加賀に、翔鶴は思わず声をかけた。
翔鶴「加賀さん……私も手伝います…!」
加賀「貴女たちと一緒にしないで…!これは、私の役目よ…」
翔鶴「加賀さん…」
瑞鶴「ちょっと!翔鶴姉にそんな言い方…」
加賀「黙りなさい五航戦。私の心配をしている暇があったら、自分たちにできることをしなさい。戦場は、あの森だけではないのよ…!」
翔鶴「私たちに、できること……」
言われ、目を閉じて思考する――と。
翔鶴「――いる」
瑞鶴「翔鶴姉、何?」
翔鶴は目を閉じたまま呼びかけた。主を結界に捕らわれ、行く先を失った艦上機らへと。
翔鶴「友永隊、江草隊、第六〇一航空隊!これより第五航空戦隊旗艦、翔鶴の指揮下に入りなさい!貴方達の任務は新都で苦戦する味方の支援よ!行って!」
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