ドドドドドド…
青葉「この音は…!」
工房の地下に位置する独房でまんじりともせず助けを待っていた青葉は、頭上で響き渡る戦闘音にはっとして立ち上がった。
青葉「司令官が…不知火ちゃんたちが助けに来てくれたんだ…!こうしちゃいられません、青葉も何とかしてここから脱出を…」
色めき立つ青葉だったが…
青葉「あ」
当然のことながら、捕らえた捕虜に補給をする者はいない。弾薬は空、燃料も艤装の各所にごく少量が残っているのみだ。
青葉「う~ん、困りましたねえ…」
…と、通路を挟んで向かいの独房で、すっかり不貞寝を決め込んでいる男が青葉の目に入った。
青葉「そうだ!ねえ司令官、ちょっといいですか?」
升黒「…俺か?」ゴロリ
青葉「貴方の他にここに司令官がいますか?」
升黒「放っておけ…俺はもう自分の艦娘も奪われた。どうせ何もできやしないんだ…」
青葉「あっちゃ~、すっかり凹んじゃってますねえ…って、そんなことより司令官、『女神』持ってませんか?」
升黒「『応急修理女神』のことか?持ってはいるが…こんな陸の上では使い物にならんだろう」
青葉「いいからいいから」
怪訝な顔の升黒から『応急修理女神』の妖精を受け取ると、青葉は何を思ったか背中の艤装を下ろし、独房の通路側の壁に立てかけた。
升黒「何を…」
青葉「あっ、耳塞いで口を開けてください」
升黒「…?」
ドガァン!!升黒が反応するよりも早く、その視界は閃光に覆われた。青葉が自分の艤装を爆破して壁を破壊した…意識があれば、そう理解していただろう。
青葉「ありゃりゃ。だから言ったのに…まぁいいや。そこで寝てれば安全ですから、じっとしてて下さいねー?」
勿論、その声も気絶した升黒には届いていない。その間に妖精の手によって爆破した艤装はすっかり元通りに修復されていた。『女神』の効果で燃料、弾薬も満タンである。
青葉「それじゃ、青葉もひと働き、頑張っちゃいますか!」
爆発音を聞きつけて集まってくる竜牙兵の足音を聞きながら、青葉は楽しそうに笑った。
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その頃…
陽炎「さて、突入したはいいけれど…」
扉を蹴破って館の通路に飛び込んだ陽炎と不知火が目にしたのは、無数の扉と階段が連なる通路であった。
不知火「電探は効いています。通路は沢山あるように見えますが、実在しているのは正面の廊下と、上と下に向かう階段が1つずつです」
陽炎「やれやれ、魔術っていうのは厄介なもんねえ…」
その時。
ドガァン!!不知火「今の音は…!」
陽炎「青葉さんだ!下にいる!」
カンカンカンカン……
地下に向かう階段を駆け下りる。階段の先の廊下は、これまた左右に分かれていた。
不知火「く…青葉さん、どっちに…?」
陽炎「どうする?」
不知火「二手に分かれましょう。陽炎は右へ」
陽炎「了解――不知火」
不知火「?――なんでしょう、陽炎」
急に真剣な声色に変わった陽炎に、不知火は思わず振り向いた。一瞬、見つめあう二人。
陽炎「――死ぬんじゃないわよ」
不知火「陽炎こそ」
ふ……と、2人の口から笑みが漏れる。大丈夫。ここまで無事に来られたんだ、きっと上手くいく。
陽炎「んじゃ、行きますか。陽炎、抜錨します!!」
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