霰は跳弾という奇策を用い、不知火・陽炎両名を工房の中に突入させることに成功した。だが―――――

霰「ぐ……」

ヴ「どうした蛮族の娘よ!先ほどの勢いはもう失われたのか?」

本来ヴラド三世の真価は防衛戦、守城戦にこそ発揮される。それは生前彼が超大国相手に何度も勝利を挙げていることから明白だ。
初手こそ奇策によってすり抜けられたものの、それがなければ霰単独で戦うには荷が重すぎる相手である。次いで宝具極刑王(カズィクル・ベイ)は突き立てられる杭の数が多ければ多いほど呪的な心理効果が強くなり、対象に多大な恐怖と精神的圧迫を与えるという二次効果をも併せ持つ。
―――霰は精神的に追い詰められ、動きが鈍っていた。これ以上の戦闘続行が難しくなるほどに。

霰「はぁ、はぁ…」
霰(何、これ……怖い…苦しい……)

視界がぼやける。霰もかつて飛行場姫や中間棲姫など、数多の強敵・難敵とも渡り合ってきた歴戦の艦娘である。だが、その霰にとってもこれほどまでに恐怖を感じるのは初めての経験であった。
それでも意識を保ち続け、杭をかわし続けている。だが、もう攻勢に出ることは叶わなくなっていた。そして杭が増えればさらに精神的圧迫が増してしまう。どうしようもない悪循環に陥ってしまっていた。

ヴ「…そこだ」

霰「―――――あ」

必死で耐えていた霰であったが、どんどん効力を増していく精神的な圧迫の前に隙を見せてしまった。一秒にも満たない、だが致命的な隙。
そしてそれを見逃すほど、ランサー(ヴラド三世)は甘くない。

――――――霰の右足、その太ももに…数多の侵略者の血を吸った『杭』がついに突き刺さった。


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