球磨「右舷、雷撃距離まであと5クマ!」
望月「左舷同じ!」
至近距離で飛び交う砲撃をかいくぐりながら、大淀率いる部隊は“魔女”の指揮の下挟撃を仕掛ける升黒艦隊を突破すべく、必死の行軍を続けていた。此方からも牽制の砲撃を返しているが、互いに命中弾はない。しかし、無数の至近弾は確実に大淀らの装甲を剥ぎ取り、一度でも直撃があれば航行不能は免れ得ない状況にあった。
皐月(升黒艦隊)「雷撃用意…」
大淀「っ……已むを得ません、此方も雷撃の用意を!」
ガシャッ!
駆逐艦、巡洋艦娘らの魚雷発射管が、互いの喫水線下に風穴を開けるべく鎌首をもたげる。
大淀「3…2…」
双方の緊張感が最高潮に達した、その時。
ズバァッ!!!
皐月「!?」
左舷側の先頭を行く皐月の足元で、巨大な水柱が立った。航空戦艦の砲撃が至近弾となったと思われたが……
多摩「当たったにゃ!?」
日向「いや……だが、好機!!」
浮き足立った皐月に向かって、突如隊列を外れて突進を仕掛ける日向。同時に、右舷側の伊勢も敵艦隊先頭の金剛に向かって突進する。
皐月「!!」
皐月が慌てて放った雷撃を跳び越えると、日向はにやりと笑い…自慢の後部甲板を皐月の顔面めがけて放り投げた。
皐月「!!!」
ガン!!
完全に虚を突かれた格好になった皐月は、甲板の直撃を喰らい、鼻血を出して昏倒する。その体を抱きかかえると、日向は大きく旋回しながら元の隊列へ戻って行く。一方……
金剛(升黒艦隊)「
全砲門、斉射」
ドッ!!
伊勢「甘いよ!!」
キィン――!
居合い一閃。金剛の放った砲弾は真っ二つに切り裂かれ、伊勢はその間を掻い潜って金剛に迫る。振り上げた刀は、既に唐竹割の構えだ。
ゴッ!!
伊勢「安心しろ、峰打ちだ……なんちゃって」
脳天を鉄の棒で殴りつけられれば峰打ちも何もないものだが、そこは戦艦、気を失うだけで済んでいる。伊勢は日向と同様、金剛の体を小脇に抱えて隊列に戻る。先頭の艦を不意打ちで奪われた升黒司令部の2艦隊は、混乱に陥って行軍速度が大きく低下していた。大淀の指示で、部隊は両艦隊の間をすり抜け、態勢は挟み撃ちから追いかけっこの形になる。
大淀「明石さん、準備は?」
明石「もうやってる!」
多摩「準備って何にゃ?」
明石「救難信号です。ここでSOSを打てば――」
球磨「何やってるクマ!?こんな海域でSOSなんて打ったら――」
初雪「――来た」
「WRRRRRRR!!!」
多摩「深海棲艦にゃーーっ!?」
真正面に、赤や黄色のオーラをまとった黒い影が押し寄せてきているのが見えた。その数12。深海棲艦の連合艦隊だ。それを見た大淀が叫ぶ。
大淀「面舵一杯!!」
最大戦速を保ったまま、艦隊は急旋回して右に進路を変える。後方では、深海棲艦に対してT字不利の形となった升黒司令部の艦隊が、完全にその足を止めていた。
日向「やれやれ……已むを得なかったとはいえ、悪いことをしたな」
伊勢「てゆーか、あいつらやられたりしないわよね…?」
金剛「…それは大丈夫ね。ワタシの仲間はそんなに弱くないヨ…」
いつの間に息を吹き返したのか、金剛が応じる。一瞬緊張が走るが――
金剛「No,no!ワタシ敵じゃないデース!さっきはvery sorryよ…」
伊勢「本当でしょうね?」
慌てて敵意を否定する金剛に、大淀はやはり操られていたのかと尋ねる。
金剛「ワタシ達をアヤツってたのはwitchみたいな格好の女ね…youたちを捕まえろって言われたヨ…」
伊勢「そう…」
大淀「とにかく私たちの鎮守府に来てもらいます。詳しい話はそれからで良いでしょう」
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