大淀「榛名・霧島と“角のランサー”、鳳翔・金剛・比叡と“天馬のライダー”、いずれも膠着状態…というより、遊ばれています。特に天馬のほう…時折第2部隊のほうに牽制を仕掛けており、未だ半数が上陸を果たせていません」

大淀が僚艦に戦況を伝える。これまでに得られた情報をもとに、望月と初雪は敵の対策を話し合っていた。

望月「初雪…どう思う?」
初雪「ペガサスで、間違いない…と思う。あれがベレロポーンだったら無理だけど、たぶんメドゥーサだし…いける!」
望月「おっけい。大淀さん、鳳翔さんに伝えて!『天馬の弱点は鼻』って!」

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鳳翔「『鼻』…?分かりました、やってみます」

比叡「当たって!」ドッ!
金剛「バーーーニングゥ、ラーーーヴ!」ドッ!
メ「その程度?手応えのない…」

天馬の機動力は驚異的であった。高空では艦戦、低空に下りれば戦艦の主砲副砲によって攻撃を仕掛けていたが、まるで風に乗って舞う羽根を相手にしているかのように、悉く躱され続けていた。

鳳翔「金剛さん、比叡さん、三式弾を!」
金剛「三式弾!?」
比叡「そんなっ、それじゃあ鳳翔さんの艦載機も無事じゃ済みませんよ!」
鳳翔「いいから!私に考えがあります」
金剛「Hmmm、OK!鳳翔を信じマース!比叡!」
比叡「はい、お姉さま!」

「「Fire!!」」

ドッ…バァッ!

メ「ちっ…」

三式弾は榴散弾の一種。打ち出された砲弾は空中で無数の焼夷弾に分解、拡散する。元来対空射撃を目的としたものであり、艦載機は散布界から逃れるのが常道である。が――

鳳翔「行きなさい!」

鳳翔の九六式艦戦たちは敢えてそこに飛び込む。焼夷弾の隙間を縫い、機銃弾を浴びせながら天馬に突撃する。焼夷弾と機銃弾、これまでで最も密度の高い弾幕で四方八方を覆われた天馬は空中で踏みとどまり…

メ「舐めるな!」
轟っ!

天馬の翼が繰り出したのは一陣の旋風。圧倒的な機動力を生み出す翼が巻き起こした風圧は、焼夷弾も機銃弾も、艦載機さえも散り散りに吹き飛ばした。

――その時。

BRRRHHHEEEEEEEEEEEE!!!!

それは天馬が放った絶叫。旋風の止んだ空には、制御を失い、真上へ向かって暴走する天馬の姿があった。

メ「なっ――!?」

想定外の暴走に翻弄されながらライダーが見たのは、矢を放ち、残心の姿勢で立つ鳳翔の姿であった。


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