天馬が風を起こすため空中に制止した一瞬。鳳翔が放ったのは艦載機ではなく、人間の用いるただの矢。鳳翔が射たのは天馬の鼻。神代の幻想種である天馬にとって、艦娘の放つ矢など虻に刺された程度の衝撃である。しかし――それ故に――かつてゼウスの虻に刺された時と同様に――“騎英”ベレロポーンを墜死せしめた時と同様に、天馬は制御不能に陥り、暴走に至った。天馬は真上に向かったと思えば文字通り急転直下、騎英ベルレフォーンの名を冠する手綱ですら制御できぬ速度で、海面に向かって突進する!

金剛「比叡!」
比叡「はい!気合!入れて!」
金剛「全砲門!」

「「ファイヤーーーッ!!」」

ドドドドッ!

天馬が海面に突き刺さる瞬間、戦艦姉妹の一斉射撃がライダーに襲い掛かり、二色の水柱が立った。

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BRRRHHHEEEEEEEEEEEE!!!!

霧島「はっ!お姉さま!」

天馬の絶叫に、木曾の軍刀を以て“角のランサー”に相対していた霧島も思わず振り返った。

エ「よそ見なんてしてる場合?」

バキィッ!

霧島「ぐぅぅっ!!」

横薙ぎの一撃を受け、粉砕された軍刀とともに霧島は10メートルも上空へ投げ出された。追撃のために跳躍したランサーが見たものは、何故か不敵に笑う霧島の顔であった。

霧島「榛名ぁ!!」
榛名「はい!」

前方の地上から狙いをつける榛名を見てランサーは考える。成程、英霊といえども、魔力放出に長けたものでもない限り空中での移動は大幅に制限される。そこを狙い撃とうというのだろう。が、実のところランサー自身も力を解放すれば『飛ぶ』ことはできるし、そこまでせずとも砲弾など切り払えば良い…そう考えて構えを取ったランサーの予想は、然し外れた。

ドッ!

榛名の狙いは霧島の背中…より正確にはその数メートル手前。時限信管によって制御された爆風は霧島の背中を押し――丁度ランサーが下を向いて構えた隙に、予想外の速度で霧島が接近することとなった。

エ「ちっ!」

苦し紛れに突き出した槍は逆に霧島に掴まれ、体ごと引き寄せられてしまう。そのまま霧島は相手の頭を片手で掴み押し下げ、露わになった背中をもう一方の腕で抱きかかえ、脳天を真下に向けた姿勢で押えこむ。

霧島「せいやぁーーーっ!」

ゴバァッ!

公試成績36,668トンの重量を上乗せされたパイルドライバーが、冬木港のコンクリートに突き刺さった。


_vs_magus_3-4