不知火「以上が作戦の内容になります。何か質問は?」
霞「市街戦になるって話だけど…周囲への被害は考慮しなくていいのかしら?」
不知火「無論、なるべく避けるべきです。特に人的被害は。とはいえ、向こうも英霊を出してくるのならば人払いくらいはしているでしょうから、あまり気にする場面はないはずです」
最上「冬木には他の魔術師も多いみたいだけど、それは大丈夫?」
大淀「問題ありません。軍令部を通じて冬木市の管理者である遠坂家および冬木教会と連絡がついており、『聖堂教会、魔術協会および所属の魔術師は自衛行動を除いて戦闘行動に関与しない』との言質を得ています」
不知火「他には?」
司令室を見渡すが、ざわめきの他に声は上がらない。
不知火「では、最後に…」
不知火「この作戦は今までとは違う、戦闘者としての次元が全く異なる相手との全面対決です。一歩間違えれば、命はありません。…ここで逃げ出すものがいても責めることはない、と司令は仰いました。離脱を希望する人は、遠慮なく申し出てください」
ざわめきが止まり、司令室を沈黙が支配する。…最初に声を上げたのは陽炎だった。
陽炎「ふっ、何を言い出すかと思えば…あんた誰にものを言ってるの?私たちは駆逐艦よ。強敵を前に逃げ出す駆逐艦がいるものですか!」
黒潮「せやな、怖い相手だからこそ奮い立つ…それが駆逐艦てモンやで!」
そうだ、そうだの声が駆逐艦たちの間から上がり始める。
神通「くすくす。ならば、軽巡洋艦が範を示さなければなりませんね。皆さん、覚悟を決めましょう」
愛宕「あら、軽巡だけ?もちろん、重巡のみんなだって、やるわよね~?」
伊58「潜水艦も忘れないでほしいでち!」
武蔵「ふむ…この期に及んで逃げようという大型艦がいたならば、逆に勇気ある行動というものだ。この武蔵が褒めてやるぞ?」
加賀「次元の違う相手に挑む戦いなら、私たちは70年も昔に経験している。そうではなくて?」
赤城「加賀さん、慢心は禁物ですよ」
加賀「慢心じゃないわ、覚悟よ」
赤城「くすっ、そうですね」
長門「そういうことだ。不知火、ここにいるのは覚悟を決めた者だけだ。その者たちに掛けるべき言葉は…お前なら分かっていよう」
不知火「皆さん……」
改めて周囲を見渡し…先の問いが愚問であったと悟る。『覚悟』とともに、聯合艦隊旗艦として不知火は宣言する。
不知火「――兵は拙速を尊びます。作戦決行は今夜。主力艦隊は日没とともに出港し、フタヒトマルマルをもって作戦開始します」
不知火「暁の水平線に、勝利を刻みましょう!」
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