「よく言ったぁ!!」

(カッ!!)

天高くから“スポットライト”が那珂を照らし出す。何時の間に登ったのか……スポットライト探照灯は魔城の天守閣に立った2人の艦娘が掲げていた。

川内「それでこそ、この川内の妹!赤城さん!ここは私たち川内姉妹が引き受けたぁ!」
神通「英霊のお2人には、那珂ちゃんライブを存分に堪能して戴きます」ニコッ
那珂「神通ちゃん、川内ちゃん……!」

「あーあー、マイクチェックー、ワン、ツー……あ、これは生きてるわね」

これも何時の間に目を覚ましたのか、霧島が上体を起こして、何やらマイクを弄くっていた。当然眼鏡は割れ、耳と鼻から血を流したままである。

那珂「霧島さん!?大丈夫なの?なんか凄い顔になってるけど……」
霧島「この霧島、音量設定のミスで気絶しかけたことは一度や二度ではないわ」
那珂「よく分かんないけどスゴイ!?」
霧島「はい、このマイクよ」
那珂「あ、ありがと……よ、よし!それじゃ気を取り直して、『初恋!水雷戦隊』、いっくよーーーー!!」

イチ、ニ-、サン、ハイ! カ-ンコレ-カ-ンコレ-カ-ンコレ-

エ「那珂ちゃん……悔しいけどステキだわ……!」

音波攻撃を受けてうずくまっていた艦娘達も徐々に立ち上がり始めている。

雲龍「雲龍…上陸完了…!」

赤城が後方を確認すると、隊列の最後尾に位置していた雲龍が榛名の手を借りて上陸を完了したところであった。

赤城「皆さん、ここは川内さん達に任せましょう。第2部隊、全速離脱します!」

駆け出す第2部隊の艦娘達を見て、すっかり呆けていたライダーが我に返る。

メ「……はっ!?な、何ですかこの茶番は…!行かせないッ!」

空母達の背後を狙った突撃はしかし、突如目の前に出現した爆風の壁に阻まれた。

BANG! BANG! BANG!

龍驤「置き土産やー!あとは頼んだでー!」

200機はいようかという艦爆・艦攻の群れが、夜闇に消えていく艦娘達の背中を追いかける。思わず急停止したライダーの四方を、すかさず金剛、比叡、榛名、鳳翔が取り囲む。

金剛「Hey! 那珂ちゃんLIVEはまだ始まったばかりデース!」

ランサーの方はと見れば、“観客席”は既に戦場ではなく…那珂の作り出すエンターテイメント空間と化していた。

那珂「かんこ・かんこ・かんこ・かんこレ!ホイ!」
川内・神通・エ「かんこ・かんこ・かんこ・かんこレ!ホイ!」

メ「どうしてこうなった…………」


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不知火「ここが…冬木大橋ですね」

先行して未遠川を遡上していた第1・第3部隊は、市域の中央に位置する冬木大橋の真下にいた。

大和「あそこから土手を登れそうですね。第1部隊は、私に続いてください」

大和は堤防の傾斜が緩やかな場所を選び、上陸地点を指定した。第3部隊旗艦の扶桑も僚艦に指示を伝える。

扶桑「私たち第3部隊は此処で待機。上流を瑞雲と甲標的で索敵してから、駆逐分隊を向かわせます」
山城「了解…って訳には行かないのね。やっぱり不幸だわ…」

橋を見上げた山城の目には、欄干に立つ黒い人影がはっきりと映っていた……


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