明石「ふぅ、取り敢えず大淀の分は直りましたよ」
“鮮血魔嬢”の余波で破壊された通信装置の修理が終わり、大淀は急いで各所の状況を確認し、提督に伝える。既に出現した英霊は6騎。うち5騎…メドゥーサ、エリザベート・バートリー、カルナ、ジークフリート、そして“不思議の国のアリス”については正体が判明している。望月と初雪は“白髪のアーチャー”の正体について議論した。
望月「アイアスの楯とメディアの短刀…?」
初雪「両方持ってるなんて…誰だろ…ヘラクレス?ヘクトール?」
望月「もしかするとアイアスとメディアが両方いて、宝具の貸し借りがあるのかも」
初雪「てゆーか、ルールブレイカー何本あるの…」
大淀は各部隊に提督の指示を伝える。
大淀「古鷹さん達は武蔵さんに合流して下さい。赤城さんは引き続き第2部隊を率いて教会方面。大和さんは柳洞寺方面へ」
赤城『了解です』
大和『了解』
大淀「金剛さん、天龍さん、あきつ丸さん。もう足止めは充分です。撤退し、他の隊に合流してください」
伊勢「そう言われて簡単に撤退させて貰えるものでもないんだろうけど」
明石「天龍さん達はたぶん大丈夫だと思うんですけどね」
日向「ん?何故だ?」
明石「えっ、聞いてないんですか?今のあの娘達の武装、ちょっとした宝具級なんですよ」
球磨「ど、どういうことクマ!?」
衝撃の発言に、球磨が素っ頓狂な声を上げる。明石は、出撃前の作戦会議で不知火らに伝えた内容を繰り返した。
明石「ふふん、こんなこともあろうかと、提督の伝手で『封印指定の人形師』なる人物と接触しまして、何人かの艤装を魔術で強化して貰っていたんです」
日向「いったいいつの間に…」
明石「いつの間にやら、です」
多摩「でもその割には、天龍も龍田も普段の出撃じゃ強くなったようには見えなかったにゃ」
明石「強化したのはあくまで“神秘”の程度だけですからね。物理的な威力は変わってないんです」
球磨「なるほどクマ」
明石「因みに私の艤装も強化して貰ってるんですよ?魔力の乗った私の工具で皆さんの艤装を調整したので、皆さんもちょこっとだけ強化されてる筈です。流石に宝具には敵いませんが」
伊勢「ふーん。じゃあ、少なくとも天龍達はサーヴァントともマトモにやりあえるってわけ?」
明石「……………………たぶん」
球磨「そこでハッキリしてほしいクマ!?」
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天龍「でやあああっ!」
身体の上に何重にも覆い被さったトランプの兵隊を蹴散らし、天龍は荒い息を吐く。
天龍「はぁ……はぁ……」
天龍(くっ、1体1体は大したことねぇ。あのデカブツが厄介だが、それでも戦艦棲姫とかのが強えくらいだ。だが流石にあのタフさは…このままじゃジリ貧だ。撤退しろって言っても…)
天龍は周囲をぐるりと見回す。
天龍(ちっとキツイな…)
そこへ、丁度ジャバウォックの剛腕を避けて後退してきた龍田と背中合わせになる。
天龍「龍田」
龍田「なぁに、天龍ちゃん?」
天龍「デカブツを頼む。オレは雑魚どもを突破して本体のチビを叩く」
龍田「!…待って天龍ちゃん。青葉ちゃんの暗号、忘れたの?『小さき者に手を出すな』って…」
天龍「覚えてるさ。けど…」
龍田「だったら…」
天龍「まあ聞けって。ぶっちゃけ、今のまま本体を放置しててもジリ貧だ。だから一か八かでも、やんなきゃなんねえ。それに勝算もある。よくあるだろ?“手出しした奴だけがヤられる”って。だから、オレがやられたら、その隙にお前がトドメを刺せ」
龍田「やーよ。それなら私が行くわ」
天龍「駄目だ。これは間合いの短いオレの役目だ。それに、青葉のいう『小さき者』がアイツだって決まった訳じゃねえ。考えてみりゃ“不思議の国のアリス”が攻撃されてやり返す、なんて聞いた事ねえだろ?」
龍田「……」
天龍「大丈夫だって!オレは死なねえ。世界水準軽く超えてんだぜ?それに…お前がいるんだからな!」
龍田「天龍ちゃん…分かったわ。絶対、守るから」
ナ「お話は終わりかな?」
敢えて攻撃の手を緩め2人を観察していた“アリス”が問う。
天龍「おう、待たせたな。それじゃ、行くぜッ!!」
ゴッ!!
全砲門を前方に向け一斉射、トランプ兵が吹き飛ばされてできた隙間に、天龍は果敢に飛び込んだ。
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