隼鷹「第2次攻撃隊!緩めないでよ!」
龍驤「ようやく大和らが動けたさかいな。戻った子らも悪いけど、すぐ補給して出てもらうで」
龍驤・隼鷹と第6駆逐隊は冬木センタービルの真下に到着していた。周囲に人の気配はなく、彼女ら自身も何となく“いづらい”空気を感じていた。
暁「こ、怖くなんかないんだから!」
Вер「分かってるよ。たぶん“人払いの結界”っていうヤツだ」
雷「ここからが私達の見せ場ね」
電「な、なのです!」
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ジリリリリリリリリリ!!
紅茶「ん?」
ビル全体に火災を伝えるベルが鳴り響く。屋上からは見えないが、下層階で火災が発生したようである。爆撃と砲撃、2方面の攻撃に同時に対処を強いられていたアーチャーは、矢を番える手を止めずに思考する。
紅茶「彼女達が火を放ったのは間違いないが…」
現在このビルにいるのはアーチャー自身と、最下層に侵入した艦娘たち、そして警備員など、“職務上居ないわけにはいかない”少数の一般人である。アーチャーはこれらの一般人には魔術で眠らせることで対処していたが、今のベルで目を覚まし、ビル外へ避難を始めているようだった。
紅茶「まさか…な」
アーチャーが想起していたのは、或る時間軸でセイバー=アルトリア・ペンドラゴンのマスターであった、そして彼自身の生前の養父であった男の所業である。その男は高層ホテルの最上階に陣取った敵魔術師を仕留めるため、まずホテルの下層階に火を放ち一般人を避難させた後、ホテル全体を爆破解体してしまったという。
紅茶「余計なことをされる前に仕留めるか?」
市民の味方を標榜する艦娘がビルの爆破をするなど考えにくいが…などと思考するアーチャーの耳に、想定外の――しかし或る意味当然の音が飛び込んできた。
ウウウゥゥゥウウウゥゥゥウ………
紅茶「消防?チッ…これが狙いか…!」
そう、放火は“人払いのため”でなく、“人を呼ぶため”のものだった。
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龍驤「お務めご苦労様やな」
警察官「艦娘さん達も」
ビルの正面玄関前で、龍驤らは駆け付けた消防と警察を出迎えていた。
電「あ、怪しい男の人が入っていくのを見たのです!」
雷「私も見たわ!なんか色黒で背が高いやつ!」
警察官「本当に?」
暁「何よ!レディの言うことを疑うの?」
Вер「ハラショー」
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気づけば爆撃も砲撃もまるで最初からなかったかのように止んでいる。中々踏み込んで来ない所を見ると人払いの結界がまだ効力を発揮しているようだが、このまま放っておけば警察官らに姿を見られかねない。
紅茶「やれやれ、面倒なことになったぞ。どうするマスター?」
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警察官「ところで、何故艦娘さん達がこんなところに?」
龍驤「(ちっ、めんどいな)提督の付添いや。なんや新しい泊地の候補地を視察するとかで」
警察官「ふむ。で、その提督さんはどちらに?」
龍驤「(ハァ…仕事熱心なのはええけどな…)酔い潰れよったんで先にホテル帰ったで。アイツの所為や」
隼鷹「えーっ、あたしの所為!?」
龍驤「っちゅーわけや。提督に会うんは明日でもええやろ?(ほれ!早よいけ!)」~~~~~~~~~~
不知火「ではここからは駆逐分隊のみで捜索に入ります。先ずは西側、穂群原学園方面から」
扶桑らの献身により先へ進むことのできた第3部隊は、未遠川扇状地の付け根、丘陵地の入り口に当たる位置にいた。
北上「あたしらは待機だね」
不知火「ええ。青葉さんを発見できた暁には、撤退時の護衛をお願いします」
北上「りょーかい」
不知火「では……駆逐分隊、出撃します」
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