カ「………」
ランサーの周囲に膨大な魔力が集まる。魔力を感じることができないはずの艦娘にも、その気配が感じられるほどの高密度の魔力。
『神の一撃』が放たれようとしていた。
扶桑「みんな、聞きなさい。敵はおそらくあの“光”を使用するでしょう」
扶桑「私たちはあれを利用して冬木港に残っている仲間を脱出させます」
最上「僕たちは?」
扶桑「……何とか頑張って避けてください」
山城「姉さま、金剛たちには伝えたの?」
扶桑「ええ。ただ、あちらはもう全滅しかけているわ。―――正直、これは大きな賭けよ」
扶桑「でも、この賭けを成功させなければ私たちに勝機は無いの。もしも失敗すれば私たちも金剛も、みんな仲良く殺されて終わるわ」
三隈「そうですわね。でも、今までだってこんなことはありましたし、私達はそれを乗り越えてきましたわ」
扶桑「ええ、そうね。――――――皆、生き残るわよ。全員そろって帰るの。分かった?」
「「「了解!」」」
四人は行動を始める。絶望的な状況を、ひっくり返すために。
カ(……どうやら、オレの攻撃を利用して味方を逃がそうとしているらしい。なかなか考えるものだ)
カ(だが、その程度なのか?艦娘よ…)
この後、扶桑は思い知ることになる。『神の一撃』の前には、小手先の技術など何の意味もないということを。
カ「梵天よ、地を走れ……」カ「梵天よ、地を覆え!」撃ち出されるは『神の矢』。その光は全てを飲み込み着弾、一瞬で海水を蒸発させ大規模な水上爆発が起きた。
ランサー敢えて外したのか、あるいは幸運の女神がほほ笑んだのか。全身に大火傷を負いながらも、四人とも命はあった。だが、艤装はどうにもならなかった。至近距離で膨大な熱を浴びたために砲塔が曲がり、使える装備は一部。そして、扶桑に至っては艤装が『光』に巻き込まれ、巻き込まれた部分の艤装が“蒸発”していた。
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蝉『ふむ。
竜殺しが敵にむざむざしてやられるとは。少々油断していたのではあるまいな?』
ジーク「油断も慢心もしてはいない、彼女らがオレの予想を上回っただけにすぎん。アサシン、彼女らはどこへ向かった?」
アサシンは鳩を自分の使い魔として自由に操作することができる。彼女はこの鳩の使い魔を利用し冬木全土の戦闘の経過を観察していた。
蝉『北上しておる。どうやら、他の部隊との合流を目指しているようだ』
ジーク「了解した。それだけわかれば問題は無い」
あきつ丸「はぁはぁ、くっ、セイバーが動き出したであります!」
Bis「方角は!?」
あきつ丸「北――――――我々にまっすぐ向かってきているであります!」
Z1「お、追いつかれる……!」
ジーク「―――さて。仕切り直しだ」
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