赤城(あの青いランサー…
疾いっ!!)
白銀のセイバーと対峙する軽巡・駆逐艦娘たちを艦爆で援護しつつ、赤城は胸中でひとりごちた。爆撃の効かぬ青のランサーは、夕立がその天性の体術で以って近接戦を仕掛け、周囲で他の白露型駆逐艦が援護する形でなんとか戦線を維持していた……というより、ランサーの身のこなしの余りの速度に、夕立以外は手を出しあぐねている様に見えた。
時雨「そこっ!」ドッ!
唯一、夕立と同じく改二改修を経ている時雨のみが有効な射撃を仕掛けていた。どうやらランサーの『矢避けの加護』とは弾道を捻じ曲げる類のものではなく、単に“飛び道具を確実に避けることができる”能力であるらしい。その為、至近距離からの時雨の精密射撃は、確実にランサーの行動を制限していた。然し……
赤城(夕立さん達がついていけているのは、単に『身体能力が高い』から……技術も戦術も相手が一枚も二枚も上、このままでは…!)
ファンファンファンファンファン!
そのとき、周囲にけたたましいサイレンの音が響き渡った。新都の広範囲に展開させていた赤城の彩雲は、これが各所を駆け回る警察車両のものであることを告げた。そして――
『スマン赤城、やらかした!』
通信機から聞こえてきたのは、焦りを孕んだ隼鷹の声だった。
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隼鷹、龍驤、そして第六駆逐隊の4人は、新都の市街地を駆けていた。龍驤を詰問する警察官を隼鷹の艦爆による煙幕で捲くと、6人は逃げの一手を選択したのである。
雷「本当なのね?その魔女を見たっていうのは」
Вер「
Да……一瞬だったけど、間違いない」
大淀『龍驤さん!いったい何が――』
龍驤「どうもこうもあれへん!完全に裏目や!ウチらお尋ね者になってしもた!!」
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赤城は通信の内容を頭の中で整理しながら、目の前の状況と照らし合わせて最善の手を探っていた。
大淀『…傍受した警察無線によると、捜査対象は艦娘。捜査範囲は今のところ新都のみにとどまっているようです』
赤城(どうすれば…このままでは、譬え彼らを撃退したとしても、このまま新都で捜索を続けることは不可能…)
『天龍ちゃん!?』
赤城「今度はいったい!?」
龍田『て、天龍…ちゃ、ん……みん…な………』
加賀「そんな…天龍さんたちまでが…」
ジャバウォックに締め上げられながら助けを求める龍田の声に、赤城も加賀も思わず狼狽する。
赤城(今龍田さんたちを助けに行ける余裕はない…一体どうすれば…)
大淀『えっ!?は、はい!』
赤城「大淀さん?」
別の場所から入ったらしき通信に大淀が応え、赤城は思わず問いを投げた。
大淀『提督からの指令です。新都にいる艦娘は最低限の人員を残し離脱、深山町側から捜索してください』
加賀「そんなっ、では天龍たちはどうなるのです!」
大淀『……現状、まだ彼女達はキャスターを“押さえて”います。このまま、“可能な限り”押さえ続けて貰う…提督はそう言っています』
つまり、囮として“最後まで”戦い続けよ、ということ……余りに非情な命令であるが、現状を考えれば止むを得ないといえた。赤城は迷いを振り払い、目の前の自艦隊の対処に頭を切り替える。
赤城「最低限の人員を残し…つまり」
白「我らに斬られる者を選べ、そういうことです」
途中から聞かれていたのであろう、赤城の独り言にセイバーが応じる。
赤城「くっ……」
時雨「赤城さん!コイツは僕達に任せて!」
ランサーと対峙する白露型を代表して、時雨が応える。
犬「へえ、大した度胸だ。気に入ったぜ」
時雨「すぐに気に入らないって言わせてやるよ」
犬「ますます気に入った!!来な嬢ちゃんたち!」
赤城が振り向くと、巻物型の艤装を翻した空母娘が2人、敵を見据えていた。
雲龍「セイバーは我々が」
飛鷹「あのアル中に合流したら叱ってあげて」
漣「第七駆逐隊、お守りします!」
セーラー服の駆逐艦娘が4人、空母たちの前に立ち並ぶ。その中の1人を見て、ランサーが軽口を叩く。
犬「オイセイバー、好みの娘だからって手加減すんなよ?」
白「やれやれ、これでも公私は弁えているつもりなんですがね」
潮「ひっ!わ、私ですかぁ……?」
どうにも締まらない会話を尻目に、赤城は僚艦に呼びかける。
赤城「残りの皆さんは離脱!冬木大橋へ!」
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