「賢い子は好きだな、こっちに来ないかい?ま、臭いは元から断たたないとね。蓋だけしめても根本的な解決はしないし」

不知火「お断りします。大体それだと泥沼になるのでは?」

「あらら振られちゃった。それに泥沼?大いに結構」

不知火「おかしいですね。先ほどの話と矛盾しているではありませんか?」

「矛盾なんかしてないよ。僕らにとって君たちは唯の撒き餌でしかないし」
「単純な話さ。君たちを倒した後敵が来ないならそれでよし、来るのであれば潰す。一度目は偶然であっても二度目は必然だ、何より海軍にはいつまでもこちらにかかずらっていられるほどの余裕はない」

不知火「何の根拠が?」

「君たち海軍は今度大規模な作戦を行うらしいね?それも太平洋の島を奪還する大きな作戦が。そら、そんな大事な時に貴重な兵力を磨り潰す馬鹿がいるのか?いるんだったらぜひ顔を拝みたいかな」

不知火「それこそお笑い草ですね。作戦が終わったら潰されるだけでしょうに」

「いいや潰されない。作戦があろうがなかろうが深海棲艦はいるんだ、その警戒もしなければならないし、何より―――たとえ潰せても甚大な被害が出る。海軍は唯でさえ死傷者が多く毎年人手不足、艦娘や資源の消耗も馬鹿にはならない」
「何よりこの冬木市にも大きな被害が出るだろう。ただでさえ長年の戦争で国民が疲弊しているときに軍人が一般市民を傷つけたというニュースはさぞスキャンダルになるだろうね?そのニュースが事実かどうかであるかは別として」
「海軍にとって百害あっても一利なし。そら、これだけのリスクを負ってなお腰が重い上層部が動くとでも?まず軍隊は動かせん、交渉によってけりをつけに来るだろうね」

不知火「軍はこれなくても警察は―――」

「来ない。今回の件は極秘だし、そもそもからして海軍の失態が事の発端だ。海軍には『相手を潰して自らも口を噤む』か『交渉して公にならないように黙っていてもらう』の二つの選択肢しか残ってはいないんだよ。そして潰せない以上選択肢は一つに絞られる。さらに都合のいいことに君たちは警察に攻撃してくれたからね、なおさらだよ」

不知火「だが、まだ覆す余地はあります」

「まあね、今のお話は全て僕らが勝ったという仮定の上でのお話だから。ここで僕らが負ければすべてがおじゃん。もしも君たちが勝つことができれば、の話だけれど」
「―――さて。おしゃべりもここまでかな、ちょうどいい時間だし(・・・・・・・・・・)

不知火「時間?――――なるほど、時間稼ぎですか。せこい手を使ってくれますね……!」

「前に言ったろう?僕は臆病で弱いから、手段を選ばず絶対に勝てる状況を作らないと戦争なんてやってられないんだ。―――やっぱり君は聡明だね、ここで潰すのが惜しいくらいに」
「全サーヴァント、及び艦娘・提督殿に通達する!時は満ちた、これより艦娘の殺害、及びあらゆる宝具の行使を許可(・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・)する!」
「この先はどちらかが滅ぶまで続く死闘だ。せいぜい生き足掻いてくれ」


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