「これまで、か」

背もたれに体を預け、長々と息を吐く。マスターの発した『時間切れ』の宣告は、鎮守府に帰還していた提督らの耳にも届いていた。

龍鳳「ま、まだ降伏すれば、提督の命は――」
「気持ちは有り難いが、無理だ。降伏すれば済むのなら、そもそも戦いになどなっていない」
龍鳳「……」

執務室を沈黙が支配する。天井をじっと見つめる提督の表情は、両隣に立っている龍鳳と大淀にも読み取れない。

「大淀」
大淀「はい」
「通信を。全艦娘に繋いでくれ」

~~~~~~~~~~

『こちら司令部。所属全艦娘に告げる』

北上「て、提督……?」
モ「うるせえぞ」

『我々は敗北した』

~~~~~~~~~~

大和「ま、まだ……私たちは立って……」

『彼らの主張する“勝利条件”を達成することが出来なかった。青葉救出作戦は失敗だ』

衣笠「そ、そんな……」

~~~~~~~~~~

『諸君に非はない。皆、指揮に従いよく戦ってくれた』

曙「うるさいっての、このクソ提督…!」
白「余所見をしていて良いのですか?」
朧「……!」

『責任は全て私にある』

~~~~~~~~~~

金剛「テイトクぅ……」
ナ「うん?早くしないと、お姉ちゃんも消えちゃうよ?」

『――その上で、諸君に頼みがある。これは提督としての命令ではない。諸君の仲間の一人としての、“頼み事”だ』

~~~~~~~~~~

不知火「司令……!」

~~~~~~~~~~

「どうか、一人でも多く、生き延びてくれ」

軍人としては、誤った判断かもしれない。“戦後処理”としては、自分と所属艦娘全ての首と引き換えに、他の鎮守府への不干渉を勝ち取ることこそが正道――そこまで考えて首を横に振る。

それでは足りないのだ。升黒のように暴走するものがあっては、同じことが何度でも繰り返されてしまう。そうならないように。相手方と此方側、どちらも手を出したくない、手を出せない、そんな状況を作らねばならない。

「大淀、無線を“秘書艦専用”に切り替えてくれ」


_vs_magus_hitori-2-2