『水天日光天照八野鎮石』による魔力供給を失ったことで、サーヴァント勢の戦力は一定程度低下した。だが、その影響を受けない者もいた。スキル『単独行動』を持つアーチャークラスの英霊は、魔力供給を受けずとも全く問題なく戦闘行動を継続できるのだ。

雪風「う…………あま…つ……」
アタ「……」

アーチャーに頸を締め上げられ。声にならない呻きをあげる雪風。血流の不足した脳がその機能を停止しようとした、その時。

ボゴォッ!!

アタ「うっ!?」
天津風「まさか、暴発っ!?」

前触れもなく、雪風の背負った魚雷発射管が爆発した。雪風の体躯を逃さぬように全身で締め上げていたアーチャーは、爆風を至近距離で喰らい、もんどりうって転倒する。

雪風「けほっ……うっ…がはっ……!」
天津風「雪風!」

戒めを逃れ、必死で酸素を取り込もうとする雪風に天津風が駆け寄る。その間に、体の前面に火傷を負ったアーチャーが体勢を整えて弓を構える。

アタ「ユキカゼと言ったか、何処までも運のいい奴……」
天津風「く……」
アタ「だが此方の優位は変わらん。2人まとめて――んっ、新手か!」

ドゴッ!!

飛び退いたアーチャーの一瞬前に立っていた地面を、砲弾が鋭く抉り取る。その砲弾の主は、倒れた仲間を探しに行ったはずの……

雪風「初風ちゃん…時津風ちゃん!」
時津風「やっほ!」
天津風「アナタたち…黒潮たちを探しに行ったんじゃなかったの?」
初風「先にアンタたちが見つかったんだからしょうがないでしょうが。見たとこ苦戦してるようだし?」

4人に囲まれる形になっても、アーチャーは落ち着いた様子を崩さない。

天津風「まあいいわ、これで4対1……仕切り直しよ!」
アタ「……いいだろう、この大地の摂理というものを思い知らせてやろう!」

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叢雲「喰らえっ!!」
紅茶「――貰った!!」

夫婦剣の一方、干将を爆破して一刀となった赤い外套のアーチャー。これを勝機と突撃を開始した叢雲が見たのは然し、必殺を確信したアーチャーの構えだった。

『―――鶴翼、欠落ヲ不ラズしんぎむけつにしてばんじゃく

叢雲「!?」

徒手になったはずの左手に、再度黒い短刀・干将が出現する。アーチャーは、右手の白い短刀・莫耶とともにこれを左右に投擲した。

『―――心技、泰山ニ至リちからやまをぬき

二刀はブーメランのように回転しながら反転し、突進する叢雲を左右から襲う!

ガガッ!!

叢雲「くうっ!!」

急制動し、これを槍で弾き返した叢雲に、今度はアーチャー自身が突撃する!

『―――心技黄河ヲ渡ルつるぎみずをわかつ

叢雲「また剣が!?」

突撃したアーチャーの両手に、“2組目の”干将・莫耶が出現する。

ガガィン!!

2刀の刺突をなんとか槍で凌いだ叢雲だったが――

叢雲「うっ!?」

先に弾き飛ばしたはずの、“1組目の”干将・莫耶が再度飛来し、叢雲の両足の腱を切り裂いた。移動能力を失った叢雲は、槍を握ったままその場にへたり込む。

『―――唯名別天ニ納メせいめいりきゅうにとどき

叢雲「……!」

動けなくなった叢雲を、“3組目の”双剣をX字に構えたアーチャーが、必殺の構えで急襲する!

『―――両雄、共ニ命ヲ別ツわれらともにてんをいだかず……!』

紅茶「――鶴翼三連」

キィ―――ン……!

X字の剣閃は狙い過たず、叢雲の身体を4つに切り裂いたかに思われた。――が。

紅茶「なにっ!?」

叢雲の身体は有り得ないことに、真上に浮上して・・・・・・・その剣閃から逃れ出した。その有り得ない軌道を齎したのは、四肢を地面に磔にされ、戦闘不能となったかに思われた――

武蔵「……ふっ」

武蔵の零式水上観測機。アーチャーにとって死角となる、叢雲の真後ろから音も無く飛来した1機のプロペラ機が、ワイヤーを伸ばして叢雲の身体を持ち上げ、今アーチャーの頭上を取っていた。

叢雲「これで終わりよ!」

槍を真下に向けた叢雲を、零観が切り離す。

紅茶「っ……!」

技を放ち切って、アーチャーの足は居着いてしまっている。そして叢雲の構えた槍は、干将・莫耶の刃渡りよりも長い。

叢雲「海の底に――消えろッッ!!」

裂帛の気合とともに槍を突き出す。一転不利となったアーチャーが選択したのは――

紅茶「――投影、開始トレース・オン!」

――この事態に最適な武器・・・・・を投影することだった。


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