ドスッ……!
天と地から、2つの“槍”が交錯する。落下の衝撃が齎した土埃が晴れた後、その場に立っていたのは…
紅茶「勝負あったな」
叢雲「うっ……」
白い衣の半分以上を血の赤に染め上げ倒れた叢雲に、“槍”を握った赤い外套のアーチャーは背を向ける。
紅茶「これで、証明されたな」
結論は出た。同時に救うことの出来る命には限りがある。その上限は、その場で最も力ある者の救える数だ。
叢雲「く……そうね…………みと、めるわ……私たちは、アンタより、“弱い”……」
紅茶「その通りだ。だから、お前たちには、私に救えぬモノを救うことは出来ない」
その声に含まれていた感情は、失望だった。無邪気に希望を唱え、我武者羅に向かってくる彼女たちならば、万に一つくらい、“101人救う”ことができるかもしれない。そうした期待がアーチャーの中に芽生えていたのは事実だった。
叢雲「そう、ね……私たちには、ね……」
紅茶「……?」
アーチャーは背を向けたままである。が、意味ありげな叢雲の言葉に、耳を傾けずにはいられなかった。
叢雲「でも、気づいてる…?ここには、“さっきのアンタ”より“強い”奴がいるのよ…!」
言われ、はっとしたようにアーチャーは己の右手を見る。そこに握られていたのは、叢雲の槍を迎撃するために投影された――
叢雲「言ったでしょう、
その槍は、“救える数”に加わるって……!」
紅茶「……!」
アーチャーの右手に握られていたのは、叢雲が握っていたものと全く同じ、槍。叢雲の突きを迎撃するために、アーチャーは咄嗟に、その間合いに最も相応しい武器として“叢雲の槍”を投影したのだった。
叢雲「どうする?さっきより強くなったアンタは、同じように『1』を見捨てる?それとも、救えるかもしれないと、思う?」
紅茶「フン……」
嘆息する。既に無限の剣を得た英霊エミヤにとって、槍の1本が増えたところで大した戦力アップになりはしない。が――
紅茶「……こう言いたいのだろう?『試しもせずに諦めるな』と」
叢雲「何よ、分かってん、じゃない……」
紅茶「誰かの所為でな」
叢雲「ふん……」
素直じゃないわね、そう呟いて叢雲は目を閉じる。背中越しにそれを見届けると、アーチャーは周囲を一度睥睨し、武蔵を含め動いている者がいないことを確認してから独りごちた。
紅茶「分かっていたさ――
オレは、間違えてなどいなかった―――」
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